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溺れる魚

※陽介女体化(後天)注意
過去のweb拍手お礼小説サルベージです。
高校卒業後、ルームシェアというか同棲している二人が些細なことで喧嘩しちゃったり。にょたですがにょたと思わなければにょたではないような(どっちだ

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陽介を怒らせた。
いつもは明るく、温かいリビングは、今は冷たく静まり返っている。すっかり暗くなったというのに明かりも点けていない部屋の中、三人掛けのソファに腰かけるのは自分一人。もう一人の住人は、天岩戸のように自室の扉を閉ざして出てこない。
(そんなに、怒らなくたって、いいと思うんだけど)
はぁ、と隣の部屋には聞こえないよう、孝介は小さく溜息を吐いた。原因は喧嘩でも何でもない、ただ、ふとした陽介の動作が小動物のようでとても可愛らしかったの思わず笑ってしまったのだが、それが彼女には嘲笑だと受け取られてしまったらしい。状況や陽介の性格から考えると、そう思われても無理はないのだが。
(そろそろ機嫌、直してくれないかな。今日は夕飯、外に食べに行こうって言ってたのに)
弁明はした。しかし口元は少し緩んでいたかもしれない。だって本当に可愛かったのだ。陽介は益々頑なになり、孝介の腕を振り払って部屋に籠ってしまった。真っ赤な顔で、眦に涙を溜めて。
(泣いてる、かな?それとも、怒り疲れて寝ちゃったかな?)
ベッドの中で膝を抱えて丸くなっている陽介の姿を想像して、孝介はくつりと笑った。あの愛らしい顔を盛大に歪ませ、自分のことで頭をいっぱいにしている彼女を想像するだけで、罪悪感と同時に満足感が自分を満たしてゆく。酷い男だ、と自分でも思う。けれども陽介がいとおしすぎて、うんと甘やかしてどんな些細な痛みからも守りたいと思うのに、時折彼女を傷付けたくなる衝動に駆られるのだ。多分、愛情は制服欲とよく似ている。陽介を自分だけで満たしたくてたまらない。陽介がまだ男で、親友として横に立っていた時よりも、彼女となって自分の隣にいてくれるようなった時からの方が、独占欲が強くなった気がする。誰に憚る必要もなくなったからだろう。我ながら現金なことだと孝介は再度笑った。
今の陽介は、きっともう自分でいっぱいになっているだろう。コップに並々と注がれた想いという名の水は淵ぎりぎりまで注がれ、表面張力で辛うじて保っているに違いない。もしかしたら既に決壊して、あの部屋に溢れてしまっているかもしれない。それはあまりにも勿体ない。孝介は立ち上がると、未だ閉ざされた天岩戸の前に立った。
「陽介」
ノックを二回。返事はない。孝介は意を決してドアノブを回した。鍵はかかっていなかった。
薄暗い部屋の中、こんもりと盛り上がる布団は、よく見れば規則正しく上下している。近寄って覗きこんで見れば、孝介の想像通り、布団に包まり丸くなって寝ている陽介がいた。泣きながら眠ってしまったのだろう、頬には涙の痕があり、目元は少し腫れぼったい。罪悪感と甘い陶酔に突き動かされ、孝介は目尻にキスをした。
「…ん……」
陽介はむずがるように眉を潜めると、ますます小さくなろうとする。寝ている時の姿勢は、そのままその人間の心理状態を表すと言う。まるで胎児のように丸まる陽介はひどく無防備で、母親のように穏やかで揺るがない愛情を求めているのだろうか。
(でも陽介。残念だけど、オレはそんなにやさしくないんだ)
穏やかさも、揺るがないことにも自身がある。けれども、自分はそれだけでは済まされない。求めさせたい、求められたい。彼女と繋がる世界にすら嫉妬する。こんなに執着したのは、後にも先にも陽介だけだ。想いが重い自覚はある。だから彼女が逃げられないよう、彼女が望むものを与えて縛り付け、その周りを檻のように自分の想いで固めてゆく。気が付いた時にはもう、後戻りができないように。
「陽介」
孝介はいとしい彼女の名を呟く。呼ばれることで眠りの淵から意識が浮上したのか、陽介はそのヘーゼルの瞳をゆっくりと開いた。
「…こ、すけ…?」
「ごめんね」
謝ると、陽介はまるで子供のような透明な瞳を向けてきた。自分の中のどす黒い思いを見透かされそうで、それでも目を反らすことができずに孝介は視線を合わせる。陽介はそれ以上何も言うことはなく、そっと手を伸ばしてきた。甘えるように、誘うように。孝介は乞われるまま彼女の横に身を滑り込ませる。いつの間にか冷え切っていた足があたり、陽介は抗議の声をあげた。
「足、つめたい」
「陽介がいないから、寒かったんだ。あっためてよ」
「しょーがねー、な」
身を擦り寄せると、陽介はその細い腕で孝介の頭を抱え込み、よしよしと子供のように撫でてくれた。その温かさに、やさしさに、凝っていた何かが溶けてゆくのを感じる。こうして彼女は無意識のうちに自分を深淵から掬い上げるのだ。どうしようもなく臆病で、傲慢で、けれども格好を付けることしかできない自分を許してくれるのだ。あの時も、今も。
「あの、さ。孝介」
「ん?」
陽介は腕を解き放つと、少し顔を赤くして言う。
「カっとなって、ごめんな。あんなに怒ることじゃなかったのに」
「オレの方こそ、ごめん。お前を馬鹿にしたんじゃなくて、本当に可愛かったんだ」
かわいい、かわいい、と連呼して唇を落とせば、照れからの抗議が飛んでくるが、孝介は気にせずキスを続ける。最初は額、目尻、耳元から項へ。つう、と舌を出して白く細い首筋を辿れば、「んっ」と声を出して陽介が震えた。白くきめ細かな肌、柔らかな胸、甘やかな声、何もかもに煽られる。ここは二人だけが住む部屋で、他には誰もいない。何も躊躇う必要はない。孝介は陽介の細い腰に腕を回して引き寄せると、蕩けたような表情をしている彼女に尋ねた。
「お外でゴハンは、また今度でいい?」
「…ん」
自分への想いが溢れたこの部屋で、孝介はただ陽介に溺れる。柔肌に所有の証を刻みつけ、体の奥に自らの肉棒を埋め込む。それでもまだ足りない。陽介を求めることを止められない。
あいしてる、と全ての想いを込めて囁けば、陽介は全て分かっているとばかりに微笑んだ。




END

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