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ベクトルBの加速度指向性・7(完結) ※R-18

※R-18、陽介女体化(後天)注意
最後までお付き合いくださった方、ありがとうございましたー!
なんかもういろいろとムリヤリ気味ですが、考えるな感じろ!で読んでいただければ幸甚です(>_<) 相変わらず陽介をおにゃのこに必死で仕立て上げようとする自分の痛々しさがおかしくてたまりませんふははは
これでうちの陽介は晴れて女として生きてゆく腹が決まりますので、ちょぼちょぼとラブラブな話を書いて満足したら次回連載をはじめたいと思います。次回は一応本のつもりだったのですが、ちょっと趣向を変えてセンセイサイドのにょた話を書きたくなってきたので、もしかしたらもう1シリーズ挟んで本になるかもです。
色々と書ききれなかったことがあるので(かわいそうな目にあう一条とか、女生徒達との和解とか)はそのうちweb拍手お礼ででも出したいと思います。

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夢を見た。
自分は真っ白な空間に立っていて、周りには誰もいないし何もない。誰何の声も空しく響くだけで応えはない。どれだけ歩いても果ては見えず、天地さえも分からない。独りでも平気だと張る虚勢も空しく、孤独と静寂に押し潰されそうになり、陽介はしゃがみ込んで自らを守るように小さくなった。すっかり緩くなってしまった涙腺からじわりと涙が滲み出す。泣いたら負けな気がして、陽介は彼の名を呼ぶ。ヒーローに助けられるのをただ待つだのヒロインになるつもりではない、自分が強くなるための呪文だ。
『孝介』
ふ、と前方に光が見えた。何故かそこに彼がいる気がして、陽介は立ち上がり一も二もなく駆け出す。全力疾走だ。すぐに弾み、苦しくなるはずの息は全く切れず、それどころか足はどんどん速くなる。まるで彼への想いが加速度になったかのように。
『孝介、孝介』
光は次第に強くなり、純白だった世界は徐々に色彩が溢れ始める。清濁併せ持った、彼と一緒に見てきた景色だ。どこからか声が聞こえる。笑い、泣き、怒り、そしてまた笑う、彼と大切な仲間達の声。世界はもう空ではない、沢山の色に、音に満ちている。小さく、細くなった体でも、少なくとも自分を囲む世界は陽介を拒むことはない。空虚だった心が満たされてゆく。
陽介の足は止まらない。光の差す方へ、彼の所へ向け、ただひたすらに進んでゆく。彼女の足を動かす原動力は孝介への想い、それだけだった。
(なんで俺、アイツのことこんなに好きなんだろう)
初めは他人で、すぐに友人になって。事件を追ううちに親友になり、相棒になり、気がつけば特別になっていた。彼が自分にとって特別であるように、自分も彼の特別になりたかった。好きな所をあげればきりがない。姿形は勿論だが、透き通った声も、大きな手も暖かな体温も、やさしさと厳しさを両立させた心も、何もかもが陽介を魅了してやまない。名前を呼ばれ、微笑みかけられると胸がきゅうとなる。もっと傍にいきたい、離れたくないと思う。触れたいと、触れられたいと願ってしまう。彼のためなら何だってできる。綺麗なだけではない、溢れてしまうほどの想いを彼が受け止め、そして返してくれたから、自分は今こうして立っていられるのだ。
(愛、なんて言葉、まだ早い気がするけど――あいしてるんだ)
どんな姿でも、どんなに辛くても、彼と共に歩んでいきたい。想いのベクトルは真っ直ぐ孝介へと向かっている。一刻も早く彼に会いたい、そして、伝えたい。
すぐそこに彼がいることを確信し、陽介は手を伸ばす。指先が体温に触れた瞬間、ぱちん!と泡沫が弾けたように意識が飛んだ。




「――起きた?」
すぐ傍から大好きな声が聞こえ、陽介は驚きに数度目を瞬かせた。ぱちぱちと音がなりそうなほど長い睫毛の下で揺れる瞳に孝介はやさしく微笑む。カーテンの隙間から漏れている光は明るい。もう日が昇り切っている時間帯なのだろう。布団の上に投げ出された手には彼の指が絡んでいて、夢の中からでも彼を見つけられたことに陽介は嬉しくなった。体を起こそうとすると、伸びてきた腕がさりげなく肩を抱いて助けてくれる。まだ覚醒しきっていない陽介は駆り立てられるようにして口にした。
「孝介、あいしてる」
今度は孝介が目を見開く番だった。印象的な銀灰の瞳を丸くする彼を見て、ようやく頭が回り始めた陽介は自分が何を口にしたのか理解する。
「い、いや!あの、その」
顔を真っ赤にして慌てる陽介を、孝介はたまらないとばかりに抱き締めた。
「ったく、お前、どうしてそんなに可愛いんだよ。オレの方が先に言おうと思ってたのに」
「だから、可愛いとか言うなって…」
孝介は体を離すと、ほんのり染まった陽介の顔を覗き込んで言った。
「可愛いよ。陽介は可愛い。男の時も女になっても、とにかく可愛いし、美人だ。…オレ、お前のことを女扱いしたい訳じゃないよ。うんと甘やかしたいし、大事にしたいし、でも苛めたいし泣かせたいし怒らせたいし。それは前と変わらない。でも」
真摯に言う孝介の唇に手を当て、陽介は言葉を止める。上目使いに彼を見て彼女は口を開いた。
「分かってる。体が女になっちまった以上、扱いを変えなきゃいけない部分があるってことは頭では理解してたけど、納得できてなかった。昨日のことでなんつーか、身に沁みました」
孝介は自分が傷を負ったような表情で、そっと陽介の頬に手を当てる。赤みも痛みももう殆どない。布団の脇に近くにタオルが転がっているのを見ると、寝ている間に冷やしてくれたのだろう。彼は本当に甲斐甲斐しい。
「これ、あいつにやられたの?」
声色には静かな怒りが籠っていた。昨晩の孝介の眼光を思い出し、陽介の背中に冷汗が滲む。下手なことを言ったら彼女達の身が危ないかもしれない。庇ってやる理由もないが、自分が女になった今でも、女の子がかわいそうな目に遭うのを見たくはなかった。母親の教育の賜物で、基本的にフェミニストなのだ。思わず視線を反らしてはぐらかそうとしたが、孝介はそれを許してはくれない。銀灰の目に鋭く見据えられ、陽介はしどろもどろに答える。
「や、あいつじゃなくてですね、ちょっと、色々ありまして」
生き字引の頭はそれだけで大凡の事情を推察したのだろう、陽介の前以外ではあまり見せない不機嫌そうな顔で呟く。
「ジュネスバイトの女子か。オレ絡みで何か言われたんだな?」
「……俺、お前のその頭の良さが時々怖いわ」
言外に肯定する陽介の肩に、孝介はぽすり、と頭を埋める。
「ごめん。オレ、お前がここじゃ色々と大変だって知ってるのに、オレと付き合うことで余計に傷付くことがあるかもしれないって分かってるのに、お前から離れることなんてできない。そんなこと、考えただけでおかしくなる」
くぐもった孝介の声は途方に暮れていて、いつも冷静で寛容な特別捜査隊のリーダーの影はなかった。けれども、陽介にとってはとてもいとおしい。自分だけに見せてくれる姿に心が歓喜に震え、どんな彼でも愛しているし、受け入れたいと思う。そっと背中に手を伸ばして彼女は囁く。
「俺、別に傷付いてないよ。お前さ、そうやって先回りすんのやめろよな。お前と一緒にいるのは、俺が選んだことなんだからさ。勝手に傷付くって決めつけんな。決めるのは、俺だ」
厳しい言葉とは裏腹に、彼女の声も、背を撫でる手もどこまでも優しい。孝介はのろのろと顔を上げると、泣きそうな表情で「叶わないな」と呟いた。そしてそのまま触れるだけのキスをする。
「…好きだよ」
唇が離れた後、孝介は低い声で告げた。
「陽介が、好き。好きで好きでたまらない。オレの横に立てるのも、立っていて欲しいのも、お前だけだ。だから、傍にいて。オレは精一杯陽介のこと守るから、陽介もオレのこと、守って」
強い光を宿す瞳に射抜かれ、陽介の心臓がどくりと跳ねた。
(俺は、求められたかったんだ。彼女も、相棒も、友人も、こいつの全部の、一番として)
恋した相手に愛されるというのはどれほどの僥倖だろう。特に相手が容姿も頭脳も性格も全てが突出しており誰からも慕われる男とあっては、一生分の幸運を使い果たしてしまったような気さえする。この先何も得られるものがなくなったとしても、孝介がいるのなら構わない。迷うだろうが、彼のためなら全てを捨てることだってきっとできる。それだけの恋を、してしまった。
返事を乞われ、陽介は恥ずかしいと思いながらも自ら孝介にキスをした。滅多にない初心な恋人からのキスに、孝介の顔はみるみる緩む。
「陽介、可愛い」
「ああもう、勝手に言ってろ!」
「うん、そうする」
孝介は何度も可愛い、可愛い、と繰り返しながら、じゃれつくように体を擦り合わせ、キスを仕掛けてくる。嬉しさと恥ずかしさについ及び腰になってしまう陽介だったが、体重を掛けられ布団の上に押し倒されては逃げることもできなかった。孝介は意地の悪い笑みを浮かべて言う。
「オレ、実はちょっと怒ってます。何でバイト遅くなるって分かってたのに連絡くれなかったのかな。迎えに行くって言っただろ?」
「う…だって、気まずかったんだもん。それにやっぱ、悪いし」
「それで襲われてたら元も子もないだろう。お前も怖かったと思うけど、オレだってあの時憤死するかと思ったんだからな。…ホントに、何もされてないよね?」
孝介はぺろり、と陽介の着ていたトップスの裾をまくり上げ、その白い肌を掌で撫でる。昨晩は迎えに来てくれた遼太郎の車の中で眠ってしまったため、襟元は緩めてあるが外着のままだ。肉の薄い敏感な脇腹をなぞられ、陽介はぴくりと体を震わせた。孝介は笑みを深くする。
「確認、させて」
耳朶を食み、舌でぐちゅぐちゅと音を立てて犯す。耳が弱い彼女はあまい声を上げて身を捩った。じりじりと湧き上がる熱から逃れるように浮いた陽介の手を孝介は掴む。途端、陽介の体が明らかに強張った。孝介はすぐに思い当って拘束を解く。
「…怖い?」
陽介は返事の代わりに長く細い息を吐く。
「女って、不便だな。どうしたって男より力が弱いし、強くはなれねぇ。あんな貧弱そうな奴、男の時だったらぶっとばしてやれたのに、腕を振り解くこともできなかったんだ」
悔しそうに拳を作る陽介の手をそっと包み込み、孝介は答える。今度は拒まれることはなかった。
「だから守れるように、男の方が力が強いんだよ。ああ、でも、その分心は女の人の方が強いかも。少なくともオレにはない強さを女の子達は持ってるよ。陽介も」
「俺、も?」
小首を傾げる陽介に孝介は説く。
「上手く言えないけど…弾くんじゃなくて、受け入れて、それでも折れないっていうか。したたかさっていうのかな。しなやかで、すごくきれいだと思う」
最大級の伝達力を誇る相棒が必死に言葉を探す様がなんだか可笑しくて、陽介はくすりと笑った。すぐ拗ねた顔になる孝介に腕を伸ばして抱き付き、陽介は言う。
「俺、頭悪ィからよく分かんないけどさ。お前がそう言うなら、そうなんだろ」
(そうだと、いいな。コイツが言う強くてきれいなオンナに、俺もなれればいい)
触れ合った肌から伝わる互いの体温が熱い。もどかしくて、直に触れたくてたまらない。二人の想いは同じだったようで、情欲の籠った視線を交わし合うと、どちらからともなく唇を重ねた。先程までの児戯のようなものではない、肉欲を滲ませた深い深いキス。はぁ、と白い糸を引かせながら唇を放し、孝介は尋ねる。
「怖くない?」
陽介は蕩けた顔で、それでもしっかりと頷いた。
「大丈夫。お前、が、ほしい」
「…どこで覚えてきたの、そんな殺し文句」
纏う空気を一瞬で雄のものに変えた孝介に、今更ながら陽介は慌てる。だが時既に遅しで、本気を出した孝介によって易々と抑え込まれ、食べられてしまうのではないかというほど激しく貪られた。彼の家族の存在が頭を掠めたが、見透かしたかのように不在を告げられ、陽介は完全に逃げ道を失う。
「ひっ、あ、あ!ああッ!!」
いつの間にか二人とも服を纏っておらず、陽介は大きく足を割られて孝介のものを穿たれる。熟れたそこは悦んで男のものを飲み込み、もっと欲しいとばかりに貪欲に締め付ける。うっかり結合部を見てしまった陽介は、その卑猥すぎる光景に気を失いかけた。ぐちょぐちょに濡れた自分の肉の中にみっちりと、孝介の太くて固いものが入っている。繋がっている。
「相変わらず気持ちイイよ、陽介の中。…動くよ」
「ちょ、まだ…!」
うっとりと呟いた孝介は見せつけるように高く腰を抱え上げ、律動を開始する。感じる所ばかりを的確に突かれ、陽介はあられもない声で鳴いた。
「あっ、なんか、俺、ヘン、だ!すげぇ、気持ち、いいッ」
女になってから体を重ねるのは三回目。一度目は初めてで、二度目は流されるように。そして今日は自分から求めて抱かれている。そのせいだろうか、女の体での快楽を以前よりも素直に受け取ることができた。
(もう、恐れることなんて、ないんだ)
孝介は自分が女だから好きになったのではなく、「花村陽介」を好きになってくれたのだから。ならば女として愛されることを、もう恐れる必要はない。
「陽介――あいしてる」
達する瞬間に言うだなんて反則だ。中に納めた男のものをきつく締め付けながら、とりあえず後でもう一度ちゃんと言わせようと陽介は心に誓った。




**********




陽介が風呂から上がると、出汁のいい匂いが漂ってきた。脱衣場を抜ければ孝介が珍しく鼻歌を歌いながら鍋を掻き回している。ぺたぺたと足音を立てて近寄れば、振り向いた孝介は一瞬の硬直の後、口元を手で覆ってあからさまに視線を反らした。
「なんだよ、その態度」
「…っ、男の浪漫って、本当にあったんだな」
陽介は孝介のTシャツ一枚という姿だった。ぐちゃぐちゃになってしまった服を洗濯したはいいが、女物の服はこの家にはない。運悪くサイズ調整の効くジャージの類も洗濯中で、仕方なく孝介の持っている中でも丈が長めのシャツを貸したのだ。ぶかぶかのシャツから覗く白くほっそりとした足に、空いた襟元からちらりと見える自分が付けたキスマークに、先程体を重ねたばかりだというのにまた中心に熱が集まってゆくのを孝介は感じた。
「はぁ?まぁ、分からんでもないけど…。つか何作ってんの?超腹減ったんだけど!」
陽介は何の警戒もなく孝介の横に擦り寄り、手元を覗き込む。腕に触れたやわらかな肌と、ふわりと香った自分と同じシャンプーの匂いに、孝介は暴れ出しそうになる本能を培った根気で必死に抑えなければならなかった。
「…鳥雑炊だよ。ほら、もうできるからレンゲとお椀持って行ってくれ」
「りょーかい」
大人しく去ってゆく陽介の後ろ姿に、孝介は気付かれぬようそっと溜息を吐く。自分に心を許してくれているのはいいが、あまりにも無防備すぎるのだ。
(もう少し、男というものに危機感を持ってもらわないとな)
その方法はおいおい考えることにして、孝介は土鍋を持ってちゃぶ台へと移動する。鍋敷きまでセットして待ち詫びていた陽介は、子供のように嬉しそうに湯気の立つ椀を受け取った。
「おー、うまそー!いただきますっ」
「熱いぞ。気をつけろよ」
冷凍庫にストックしておいた鳥肉と、ネギと卵だけのシンプルな雑炊だが、二人で食べれば何倍も美味しく感じる。特に昨晩から何も口にせず抱かれた陽介は、余程腹が減っていたのか無言で食べ続けた。鍋が粗方空になった頃、ようやく匙を置いた陽介は満足そうにソファに凭れかかる。食後のお茶を飲みながら他愛もない話をし、何となくテレビを付ければ、丁度午後のニュースが始まったところだった。
『――今日未明、稲羽で起きていた連続婦女暴行事件の容疑者が逮捕されました。逮捕されたのは沖奈市の――…』
アナウンサーが読み上げた内容に、陽介は思わずテレビを凝視する。次の瞬間、テロップと共に昨晩自分を襲った男の顔が写り、陽介は体を強張らせた。孝介は茶を啜りながらしれっと言う。
「陽介を探しに行く途中、この辺じゃ見ない車だったから、車のナンバー覚えといたんだ。足立さん、がんばってくれたみたいだね」
口調こそ穏やかだ、彼の目はちっとも笑っていない。昨晩見せたのと同じ狂気に近い憤りを感じる。そのことに陽介は怖くなるどころか嬉しくなってしまった。孝介はテレビを消すと、陽介を背中から抱き寄せて腕の中に収める。もそもそと動いて居心地の良いポジションを見つけた後、陽介は意を決して口を開いた。
「あの、さ。も一回、言って欲しいんだけど」
「何を?」
「……やっぱ、いい。忘れろ」
恥ずかしくてとても己の口からは言えない。背を向けているせいで耳朶まで真っ赤になっているのを見られているのに気付かず、陽介は口を紡ぐ。背後でくすり、と笑みの気配を感じたかと思うと、耳元に唇が寄せられた。
「陽介。あいしてる」
「…俺、も」
想いのベクトルは終点に達した。どうしようもないほどの幸福に包まれて、陽介はこのしあわせを少しでも漏らさぬようにと瞳を閉じた。




END

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