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ベクトルBの加速度指向性・6

※陽介女体化(後天)注意
結局こんな方向へ。ちなみに陽介の恐怖体験(後半)は、私がリアルに遭遇したことを元にしてます。三万円だった(笑 私の値段は三万円なのね!と内心爆笑しつつ速攻で逃げましたが!

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低く重く垂れ込める雲に遮られ、星空は見えない。空気は絞れば水が出そうなほど湿っていて、今にも雨が降り出しそうだ。外套の少ない夜道を陽介は一人、歩いていた。その足取りに常の軽快さはなく、時折洩れる溜息が彼女の心が空のように淀んでいることを代弁している。
(マジ、疲れた…)
時刻は既に22時を回っている。本当はもっと早く帰れるはずだったのだが、復帰早々に人間関係のトラブルに巻き込まれて遅くなってしまったのだ。はぁ、と彼女は一際大きな溜息を吐いた。


タイムカードを押した直後、ロッカールームでアルバイトで入っている八十神高校の女子数名に囲まれた。口々に喚く彼女達の言葉は正直よく分からなかったが、要約すると友人が孝介によって酷い目に遭わされ、それは陽介のせいだという。陽介からすれば青天の霹靂だ。誓って言えるが、自分の知っている月森孝介は訳もなく人を脅かすような男ではない。彼がそういった強硬手段に出る時は、いつだってそれなりの理由がある。思い当たる節がなくきょとんとしている陽介に、痺れを切らしたように女子の一人が怒鳴ってきた。
「全部アンタが悪いのよ!あんたさえいなければ…!」
その言葉に陽介は怒りよりも悲しみを感じた。自分が男でも、女でも、彼女達には関係ない。気に食わないことを全て陽介の、強いてはジュネスのせいにしようとしている。あまりにも愚かで、弱い。相手をするのもばかばかしくなりその場を去ろうとした陽介を、彼女達は常の腰の重さはどこへというほどの素早さで取り囲んだ。
「待ちなさいよ!」
腕を強い力で掴まれ陽介は眉を潜める。女の握力などたかが知れているが、今は陽介も女だった。振り解こうとしたがこうもしっかりと包囲されては逃げることもできないので、陽介は諦めて力を抜く。
「…あんたら、俺にどうして欲しいんだ?友達に謝って欲しいのか?それとも孝介と別れれば満足?悪いけど、俺にはあんた達が気に食わないこと全部俺のせいにして、八つ当たりしているようにしか思えない」
「…っ、謝って、よ!」
図星を疲れたのか、先程とは違う一人が顔を真っ赤にして叫ぶ。陽介は昂る感情に曇った彼女の瞳を、怖いほど静かに見据えて言った。
「断る。だって俺、あんたに何もしてない。――孝介は、曲ったことが嫌いなんだ。理由もなしに人に酷いことしたりしないし、俺が頼んだってやらねーよ。っていうかあんたら、友達がどうして孝介を怒らせたのかちゃんと聞いたのか?」
「そ、それは」
正直に口籠る少女らに、陽介は彼女には似つかわしくない冷たい視線を向ける。見かけこそ可憐な女子高生だが、陽介とて第一線でシャドウと戦い抜いてきた猛者だ。何の訓練も受けていない少女達を黙らせることなど容易い。たじろぐ彼女らの間をすり抜け、陽介はその場を去ろうとした。
「…に、よ…」
掴まれたままだった腕を引かれ、陽介はバランスを崩す。一人の少女は元は可愛らしいのであろう顔を鬼のように歪ませて手を振り上げた。
「あんたなんか、あんたなんかッ!」
腕の軌跡が陽介にははっきりと見えた。自分の素早さならば、振り下ろされる手など造作もなく交わせる。拘束を解き、逆に彼女を地に沈み込ませることも難しくはない。だが陽介はあえて平手を頬に受けた。ぱしり、と乾いた音がロッカールームに響き渡る。驚いたように自分の手を見る少女に、陽介は憐みの目を向けた。
「ひとを、叩くのって、痛いだろ?なぁ、この辺でやめとけよ。つらくなるのは、アンタの方だ」
少女の顔がこれ以上ないほど赤くなる。再度振り上げられた手に陽介は内心で溜息を吐いた。しかし衝撃が来るよりも早く、短いノックと共に扉が開かれる。
「――何やってるの、あなた達?!」
入ってきたのはそれなりに地位のあるパート女性だった。どう見ても陽介を私刑にかけているようにしか見えない構図に、彼女は間に割り入って少女らを睨む。
「全員、今からマネージャーの所へ行きなさい。事情を聞きます。花村さんはとりあえず着替えて」
「あ、はい」
口々に文句を言う少女達に苛立ちを覚えたのだろう、彼女は騒ぎを聞きつけて集まってきた社員を捕まえ、有無を言わさず連行させる。しぶしぶ連れてゆかれる彼女らをぼんやりと見送り、陽介はようやく息を吐いたロッカールームには陽介とパートの女性だけしか残っていなかった。
「花村さん、大丈夫?」
「はい、ありがとうございます酒井さん。助かりました」
にこり、と笑って頭を下げると、彼女は呆れたように溜息を吐いた。
「まったく、あなたって子はホントに…。っていうか最近の子は何考えてるのかしら?!頭にきちゃうわ」
憤慨する彼女は、数日前の夜に喫煙所で会った社員の妻だ。夫婦揃って陽介のことを気にかけてくれており、その優しさに心が暖かくなる。あまり待たせる訳にはいかないと慌ててエプロンを脱ぎ、荷物を整理し出す陽介に、酒井は幼子に言い聞かせるような声色で言う。
「花村さん。あなたはここでは色々とやりにくい立場だろうけど、あなただってまだ高校生なのよ。無理して全部を一人で背負う必要なんてないの。たまには大人を、頼りなさい」
ね?と顔を覗きこまれ、陽介はどう応えていいか分からなくなる。酒井はやさしく頭を撫でると、「先に行ってるわね」と言い残して部屋を出て行った。


(酒井さんには、旦那さんにも奥さんにもお礼しなきゃな)
あの後、少女らはマネージャーにこってりと絞られ、処分は翌日以降に店長判断となった。陽介は事情聴取のみでお咎めなしだったが、これで明日からまた仕事がしにくくなることは確実だろう。考えるだけで憂鬱になる。
「…いてーや」
赤くなった頬を手で押さえ、陽介は笑った。冷え切った自分の手がとても気持ち良かった。
吐き出した息が白く凝る。ポケットから携帯電話を取り出せば、メール受信を知らせるランプが忙しなく点灯していた。恐らく孝介だ。今は見るのも億劫で、陽介は再び電話をポケットに仕舞う。
一昨日の晩、陽介が一方的な糾弾をしたにも関わらず、孝介は態度を変えることはなかった。変えてしまったのは自分の方だ。未だ自分の中の蟠りを整理しきれず、彼に合わせる顔がなくて、陽介は孝介を避け続けている。今日もアルバイトがあることは告げていない。

『花村センパイは、さ。不安なんじゃないのかな?月森センパイが「花村陽介」だから好きになったんじゃなくて、「女になった花村陽介」を好きなんじゃないかって』

昨日りせに言われた言葉が頭の中で蘇る。一年下の後輩は芸能界という特殊な場所に身を置いていたせいか、その年齢にしては人間の心情を驚くほどよく理解している。学校を休んだ陽介の元に訪れた特別捜査隊の女子達は、まとまりのない陽介の言葉を茶化すことなく聞いてくれた。
(多分、お前の言う通りだよ、りせ)
燻ぶる不安の正体は、結局は孝介に愛されている自信が持てないことだったのだ。甘い言葉も、体を重ねることも、男同士の時から変わらないというのに。よく考えれば、男同士の時こそ本当に相手を好いていないとできない行為だったのに。貪欲で浅ましい自分は、孝介の想いを際限なく欲しがってしまう。彼がいなくなったらどうなってしまうのか自分でも分からない。
「って、ダメだダメだ、何ナーバスになってんの、俺!」
あのシャドウと対峙した時に誓ったのだ、辛くても苦しくても、彼の元へと顔を上げて歩いてゆくと。蹲り、嘆くだけでは終わらないと。陽介はぷるぷると頭を振ると、気合いを入れて歩き出した。何度も通った道なのに、田舎のため民家も少なく明かりが乏しい帰路は酷く心細く感じる。気を紛らわすために音楽でも聞こうかと、陽介は最近すっかり使わなくなっていたヘッドフォンを鞄から取り出そうとして足を止めた。タイミングを合わせるように、角の向こうから人影が一つ、こちらへ向かって歩いてくる。都会なら何も珍しいことではないが、稲羽でこの時間に外で誰かとすれ違うことは珍しい。不思議に思いつつも鞄の中に手を突っ込み目的の物を探していると、目の前で影は歩みを止めた。スーツを着た、足立と同じくらいの年齢の男だった。
「あ、あのっ」
男はずいっ、と陽介に向って手を差し出してくる。道にでも迷って地図を出されたのかと思った彼女は手元に視線を落としたが、握られたものを見て硬直した。数枚の一万円札が無造作に折り畳まれている。
「………はい?」
意図が分からず思わず間の抜けた声を出すと、男はどこか胡乱な眼で、それでも必死に言い募る。
「何もしません、ちょっとだけ、ちょっとだけでいいんでお話、してください!向こうに車、停めてあるんで」
陽介は数秒の沈黙の後、なかったことにして歩き出した。そういえば、最近夜になると変質者が出るから注意するよう学校やジュネスで注意された気がする。まさか自分が遭うことになるとは思いもしなかったが。今日は厄日に違いない、と陽介は幾度目かも分からない溜息を吐いた。
「ちょ、待ってください!お願いしますっ」
男はしつこく食い下がって、陽介の後を追ってくる。苛立ちが最高潮に達していた陽介は、陳腐だとは思いつつもお決まりの台詞を口にしていた。
「警察、呼びますよ?」
男は夜目にも分かるほどさっと顔色を変えると、いきなり掴み掛ってきた。突然のことに対処が遅れ、陽介は腕を掴まれる。先程の女子とは比べ物にならないほど強い力に腕が軋み、骨が悲鳴を上げた。
「いっ…!何すんだよ?!放せッ」
「何もしないって、言ってるじゃないですか!お金もあげますから、ほら!」
ぐいぐいと札を押しつけられ、陽介は必死にそれを払い除ける。乾いた音と共に札が舞い、アスファルトの上に落ちた。男の目に暗い光が灯る。しまった、と陽介は思った。

『センパイ、女の子になっちゃった以上、覚えておいた方がいいよ。ヘンな奴に絡まれたら相手しちゃダメだけど、刺激もしちゃダメ。相手は何してくるか分かんないし、悔しいけど男の力には敵わないから、とにかく逃げて。助けを呼んで』

りせの助言が脳裏に走る。だが時既に遅し、だった。男はすさまじいまでの力で陽介を引きずって歩き出す。このまま連れていかれたらどんな目に遭うかは流石の陽介も想像できた。
「やだ、放せ、放せよっ…!」
必死に足を踏ん張り、掴まれた腕を振り払おうと試みるが、拘束はぴくりとも緩まなかった。運の悪いことに周りには民家が殆どない。叫んでも誰も助けには来てくれない。千枝のように蹴りを入れてやろうとして、陽介は自分の足ががたがたと震えていることに気付いた。
(なん、で――?!)
男の時ならこんなひ弱そうな男など恐れるに足りないし、そもそも襲われることがなかっただろう。だが今は怖くて仕方がない。掴まれた腕から伝わるねっとりとした体温が気持ち悪くて吐きそうだ。

『陽介、酷だとは思うけど、お願いだから自分の体が女の子になってること、自覚して。じゃないとオレ、心配で陽介の傍から離れられない』
『花村さ、確かにちょっと無防備かも』

孝介の、一条の言葉が思い出される。彼らの心配はこういう意味だったのだ。彼らの進言を軽んじていた訳ではないが、自分は大丈夫だと笑うだけで分かってはいなかった。じわり、と涙が滲んだが、陽介は歯を食いしばって抵抗を続ける。
(孝介)
自分から遠ざけてしまった彼の名を心の中で、縋るように何度も呼ぶ。けれども現実は甘くはなく、彼はヒーローのように現れてはくれない。男は狂気を露わに叫んだ。
「だいたいさぁ、こんな時間に女の子が一人で歩いてるなんて、襲ってくださいってことだろ?!だから声掛けてあげたんだよぉ」
「うるせぇ!勝手なことぬかしてんじゃねーよ!放せって言ってんだろうが!!」
裂迫の気合いで怒鳴る陽介に気押され、男は一瞬動きを止めた。その隙を見逃さず陽介は腕を振り払うことに成功したが、逃げるために背を向けた瞬間、背後から腰を掴まれ抱き付かれる。怖気が全身に走った。
「ひっ…!」
「積極的だなぁ。さ、あっちに車があ」
男は最後まで言葉を口にすることができなかった。鈍い音がしたかと思うと、力強い腕によって男の体が引き剥がされる。涙の膜の向こうに見えたのは、切望していたシルバーグレイだった。陽介は驚きにその大きな瞳をこぼれそうなほど見開く。
「こう、すけ」
「ごめ、ん、遅くなった」
息を荒く切らしてはいたが、その声は紛れもなく愛しい人のものだった。孝介は素早く男と陽介の間に割り入り、彼女をその背に庇う。ひかりが差し込んだように、闇夜の中で彼だけが明るく見える。来てくれた、その事実だけで陽介の心は歓喜に震えた。
(ちくしょう、格好良すぎだ)
孝介は何事かを喚きながら地面に蹲っている男を睨み据える。微かに見えたその眼光は意志の弱い人間なら射殺してしまいそうなほど苛烈で、殺気に満ちていた。案の定、男は怯えてみっともなく泣き出す。怒りが収まらないまま振り上げられた孝介の腕を、陽介は抱きつくようにして止めた。
「孝介!だめだ!」
「…陽介、放して。コイツはお前に触った、だから」
彼の眼は完璧に据わっている。流石に殺しはしないだろうが、その拳が振り下ろされれば相手はそれなりの怪我を負うだろう。何より、人を傷付けたという事実に孝介自身が傷付くだろう。陽介はいやいやをするように首を振る。
「俺は、大丈夫だから。お前に人を、殴ってほしくない」
必死の説得に、僅かにだが孝介の気が緩む。男は情けない悲鳴を上げて一目散に逃げ出した。数十秒後に車のエンジン音が聞こえ、停めてあった車で逃走したことが分かる。陽介はへなへなとその場にへたり込んだ。慌てて孝介も膝をつき、顔を覗き込んでくる。
「陽介、何もされてないか?!」
「おう、だいじょう、ぶ」
返事の途中でぱたり、と涙が零れた。そのまま涙腺が決壊してしまったようで、涙が堰を切ったように溢れ出し、止まらない。孝介は自分の方が泣きそうな顔で陽介を強く抱き締める。空気さえ間に入らないように、その腕の中に閉じ込め、全ての痛みから遠ざけるように。
「ごめん。怖かったよな」
「な、んでっ、お前が、あやまんだよッ?!助けて、くれたじゃん」
しゃくりあげる体は細く、小刻みに震えている。やわらかなハニーブラウンの髪からは清潔な花の匂いがした。溢れ出す愛おしさに孝介は息が詰まりそうになり、ただただ彼女を抱く腕に力を込める。嗚咽が止むまで、孝介はずっと陽介の名を呼び続けていた。


陽介が落ち着くのを待って、孝介は少し体を離すとポケットから携帯電話を取り出した。数回のコール音の後、受話器の向こうから彼の叔父の声が漏れ出す。
「――…はい、そうです。すみません、折角今日は早く帰れたのに。…はい、分かってます」
遼太郎と言葉を交わす孝介を、陽介は彼に無理矢理着せられたコートに包まってぼんやりと聞いていた。孝介は通話を終えると、今度は違う誰かを電話帳から呼び出す。聞こえてきたのはハイテンションなクマの声だった。少し長く会話を交わし、ぱちん、と音を立ててフリップを閉じると、孝介は安心させるように陽介を抱き締める。
「もうちょっとしたら遼太郎さんが迎えに来てくれるから、一端ジュネスまで戻ろう。歩ける?」
陽介は頷き、立ち上がろうとしたが、途中で膝がかくりと抜けてしまい再び地面に座り込んでしまった。
「あ、あれ?」
呆然とする陽介の前にしゃがみ込み、孝介は背中を向ける。
「ほら、おぶさって。どうせ誰も見てやしない。嫌がったらお姫様抱っこするからな」
孝介の声は茶化しているようで本気だ。陽介は羞恥に頬を染めながらも大人しく身を預ける。彼の背中は大きく、温かかった。伝わってくる体温に陽介ははぁ、と息を吐く。
(孝介、だ)
微かな香料の香りと彼自身の匂いが混じった、月森孝介の匂い。力強く大きな手は先程の男と変わらないが、嫌悪感は微塵も感じない。触れられると嬉しくなるし、とても安心する。孝介の耳元に唇を近づけ、陽介はちいさな声で囁いた。
「…ごめん」
「何で謝るの?」
振り向かずに聞かれ、陽介は返事の代わりに首に回した手に力を込める。「苦しい」と、大して苦しくもなさそうに抗議した後、孝介はやさしい声で言った。
「陽介。今日はうちに泊まって行きなさい。家には連絡してあるし、堂島さんにも言ってあるから。明日は日曜だから、色々なこと、いっぱい話そう。オレ、お前に愛してるって言い足りないし、お前にも言って欲しい」
「うん、うん」
一度は止まった涙がまた滲み出す。ジュネスの明かりが見えてくるまで、陽介は恋人の肩口に顔を埋めて泣き続けた。




車の中で眠ってしまった陽介を起こさないよう、そっと抱きあげて二階の自室へ運びこむ。ドアを開けて先導してくれた叔父は、いくら細いとはいえ意識のない女性の体を易々と抱き上げる甥に複雑そうな顔をしていた。
「孝介。あー…まぁ、今晩はやめとくか。その、何だ。大事にしてやれよ。あと、くれぐれも高校生としての節度を忘れるんじゃないぞ」
野暮なことだと思いつつも、叔父として、警察官として言わなければならないことを言った堂島は、「おやすみ」と言い残して部屋を出てゆく。その逞しい背中に孝介は心からの感謝を告げた。
「遼太郎さん!ありがとう、ございます」
堂島はひらひらと手を振ると、できる限り足音を立てないよう軋む階段を下りて行った。
布団の上に横たえた陽介の、少し赤くなった頬を孝介はどこまでもやさしく撫でる。眦は泣きすぎて腫れてしまったが、彼女の魅力を損なってはいない。寝苦しくないよう衣服を緩め、掛布を掛けてやると、孝介は眠る彼女の耳元で囁いた。
「おやすみ、陽介。愛してる」
口の端が嬉しそうに上がったのは、気のせいではなかったはずだ。




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