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「MAYB!」サンプル(三上くみ担当分)

真冬なのに真夏の本ですがきにしない!

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 ぎらぎら――擬音を付けるとしたら相応しいものはそれしかないという程、太陽は頭上で燦々と輝いている。常ならば降り注ぐ熱と紫外線に思わず悪態を吐きたくなるが、今日ばかりは賛美したい気分だ。何故ならば、目の前には白い砂浜と青い海。風は穏やかで、波は低い。絶好の海水浴日和である。晴れていなければ意味がない。
 「やー、眩しいっスねー」
「うっひょー、まぶしいクマね!」
「…ああ」
水面は照り返しできらきらと光っているが、完二はサングラス越しに、クマはつばの広い麦わら帽子の下から、孝介は日除けに翳した手の影から、海ではなくすぐ目の前を見て呟く。彼らの視線の先では、色とりどりの水着を身に付けた特別捜査隊の女性陣と菜々子が賑やかに準備運動をしていた。
 「菜々子ちゃん、しっかり手と足延ばさないとつっちゃうよ!はい、いーち、にーい、さん」
千枝が着ているのは黄緑に白の模様が入ったタンキニで、健康的な肉体が眩しい。アーモンド型の大きな瞳が目を惹く愛らしい顔立ちは一年前と変わらず、闊達な彼女には太陽の下がよく似合った。千枝の声に合わせて懸命に体を解している菜々子は赤を基調としたチェックの水着で、兄の欲目を抜きにしても可愛らしい。叔父が見たらさぞかし喜んだだろう。
(遼太郎さん、来られなくて残念だったな)
高校二年の一年間は、それまでの人生の中でも、恐らくこれからの人生においても一番密度の高い日々だったが、いくつかやり損ねたことがあった。そのうちの一つが海辺のイベントだ。去年交わした、特別捜査隊で海かプールへ行くという約束を果たすため、孝介達は八十稲羽から電車を数時間乗り継ぎ、一泊二日の日程で海へ来ていた。宿泊場所は海水浴場からほど近い温泉旅館である。当初は堂島が保護者として同伴する予定だったが、稲羽を守る叔父はどうしても仕事を抜けることができず、菜々子だけを預かることになった。
 いくら孝介が大人びているとはいっても、本来ならば保護者のいない高校生が小学生を連れて泊ることなどできないが、そこはコネという名の魔法のステッキを振ることで解決した。今日泊る旅館は一条家の親戚が経営しており、予約も彼を通して取ってもらったため、保護者が同行できないことも彼の口添えでなんとか了承を貰うことができたのだ。孝介本人は貸しだとは思っていないのだが、義理固い友人は恩に報いると言ってきかなかった。
(一条には、沢山お土産を買って行こう)
明日は皆と一緒に八十稲羽へ戻り、一週間ほど堂島家に滞在する予定である。彼に会うこともできるだろう。都会にいる時とは比べ物にならないほど、今が楽しくて明日も待ち遠しい。高揚感に自然と笑みが浮かぶ。
「センパイ、にやけてますよ」
「完二こそ」
彼の視線の先を追ってからかうように言えば、純朴な後輩はすぐに頬を朱に染めた。そよりと吹いた風に乗って、少女達の会話が聞こえてくる。
「直斗くんの水着、格好いいね」
「あ、ありがとうございます。りせさんは…その、大胆ですね」
大きな浮き輪を手に持ったりせは、ペイズリー柄のビキニである。トレードマークのツインテールは今日はカモフラージュのために後でゆるく結ばれているが、可愛らしさはアイドルとしてテレビに映っている時と変わらず、大きく開いた胸元も自信を持って見せているから嫌味がない。直斗はりせとは対照的に胸を見せない、珍しいタートルネックの水着で、腰には綺麗なグラデーションのパレオが巻かれていた。顔立ちは中性的な美人だが、細い手足に豊満な胸はやはり女性のものだ。
「直斗は、随分と女らしくなったな」
「…その手にはもう、乗らないっスよ。つか、女らしくなったって言ったら…」
 完二はつい、と顎を反らして、ふわふわと揺れるハニーブラウンを見やった。
「ごめん天城、背中に日焼け止め塗ってくんない?手ぇ届かないんだけど」
「いいよ。…花村くん、肌、きれいだね。細いし…」
つう、と雪子の手がいたずらに背中を辿り、くすぐったさに陽介は文字通り飛び上がる。
「ひゃ?!ちょ、やめ」
「うふふ、かわいい」
にこり、と微笑んだ雪子は大人っぽい紺色のワンショルダーのセパレートで、濃い色の生地が白磁の肌と漆黒の髪をより引き立てていた。すらりとした肢体は勿論のこと、今時珍しい和風美女に自然と視線が集まる。そして陽介はオレンジを基調としたホルターネックの水着だった。見覚えのある、去年のミスコンで無理矢理着せられていたものだ。
 あの時は水着姿の彼女を他人の目に触れさせたくないあまりにすぐ脱がせてしまった孝介は、相好を崩さないよう気を付けながら彼女の姿をまじまじと観察した。暖色は陽介が好むだけではなく似合う色だ。程よく開いた胸元からは形のよい胸が覗き、肩のラインはどこまでも華奢である。露わになった腹は平らで、腰は蠱惑的なラインを描きながらも細い。手足も細い。けれども決して不健康ではない。全体的に丸みを帯びたやわらかなラインは女性以外の何物でもなく、零れそうなほど大きな瞳にそれを彩る長い睫毛、ふっくらとした唇が、男の時と同じ甘く整った顔立ちに絶妙のバランスで収まっていた。少し伸びたハニーブラウンの髪を風に遊ばせている彼女は、別れた時よりも格段に女らしく、綺麗になっていた。きらきらしい笑顔はまるでモデルのようだ。
(うん。やっぱり陽介は、可愛くて綺麗だ)



**********


「…二人っきりになりたい。陽介の水着脱がして、胸揉んで、体中舐めて触って、ぐちゃぐちゃにして、オレの突っ込んであんあん言わせたい」
恨めしげに呟かれ、陽介は顔を真っ赤にして言い返す。
「ばっ…!あんあんとか言わないから!!っていうかお前、相変わらずダイレクトすぎ!もっとこう、オブラートに包んで」
「十分包んでると思うけど。もっとダイレクトに言っていいの?」
にこり、と綺麗すぎる笑顔を向けられ、陽介はぶんぶんと首を横に振る。
「いや、いいです!十分ですっ」
「残念」
 波は穏やかに二人を岸へ運んでゆく。他愛もない会話をしているうちに足が付く所まで戻され、二人は安堵に息を吐き出した。
「もう大丈夫だな」
「ああ。皆心配してる。戻ろう」
岸では仲間たちが手を振っていた。遠目でも分かる仁王立ちはりせだろう。皆は口々に何かを叫んでいて、怒られることは確実だ。だがそれは自分を案じてくれているからで、心配させてしまったことが申し訳なくなり、陽介は少しでも早く戻ろうと体から浮き輪を引き抜いた。もう水深は胸の当たりまでで、水の中を歩くのなら浮き輪がない方が速い。
「貸して」
意図に気付いた孝介が浮き輪の紐をやんわりと奪う。当たり前のように手を取られ、水底の砂を踏みながら二人は歩き出した。海の底は意外と平坦ではなく、石や漂着物でごつごつしている。何かの固まりに足を取られ転びかけた陽介は、繋いだ手に引き寄せられて事無きを得た。
「わ、悪ィ」
「全く、本当に目が離せないよ。…陽介、ちょっとだけ」
 絡めた指が一度離れたかと思うと、背中からきゅうと抱き締められた。熱い吐息が肩口にあたり、陽介は体を震わせる。海岸まではまだ少し距離があり、自分達を待つ仲間の姿も小さくしか見えない。罪悪感を感じつつも、回された腕にそっと手を添え、陽介は体の力を抜いた。
「ちょっとだけ、だからな」
「――うん、ちょっとだけ」
急に色を変えた声に疑問を覚えるよりも早く、孝介の手が不穏な動きを始める。ビキニをずらして侵入してきた指に胸を直接鷲掴みにされたかと思うと、首の後ろに体温を感じた。
「ちょ、おま」
しかし応えはなく、代わりにビキニが上から引っ張られた。ぎょっとして首を巡らせれば、孝介がホルターネットの結び目に歯を立てて解こうとしているのが見える。陽介は慌てて抵抗を始めるが、後からしっかりと抱えられており、僅かな身動ぎにしかならない。不埒な手は弱いところを知り尽くした動きで胸を弄ぶから、体から力が抜けてしまう。腰からじわじわと生まれる甘い痺れを必死に否定して、陽介は叫んだ。
「ばか、やろッ、何考えてんだよ!やめろっ」
「大丈夫。周りには誰もいないし、浮き輪の影で見えないから」
ぱさり、と結び目が解け、布地が落ちる。背中で留っているため流されることはないものの、前面が垂れ下がって胸が見えそうになり、陽介は慌てて体を倒して首元まで水に浸かった。孝介の動きはどんどん大胆になり、乳首を摘んでくりくりと捏ね繰り回し、項を、耳を舌で愛撫する。濡れた舌の感触に思わず甘い悲鳴を零した陽介に、背後から意地の悪い笑みの気配がした。
「だめだよ、そんな声出したら。もっとしたくなっちゃう」

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