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ディラックの海に沈む光輝・2 ※R-18

※R-18
こんかいはただひたすら、やってるだけです。一応すんどめ?ですが、主人公×影花、影主×花村を含みますのでご注意ください!本番ってどこまで致したら本番なんですかね。出しても入れてなければギリギリセーフ?先っちょだけ入れてもイってなければおっけい??そんな感じですよ!
ビッチ陽介は書いていて非常に楽しかったですハァハァ センセイはわりとふつうでした。力量不足ですねスミマセン…

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 「……ん…」
 頬の下に固い感触を感じながら、孝介は目を覚ました。霞む視界に映るのは、薄暗い室内に浮かび上がるショーケース――よくコンビニで飲み物が陳列されている棚だ――と、古めかしい木の床、そして誰かの足だった。静まり返った室内には低い機械音が絶えず響いており、けれども遠くに喧騒の気配を感じる。
「――よぉ。ようやくお目覚めか?」
頭上から振ってきたのは聞き慣れた声で、孝介は弾かれたように身を起こした。途端に酷い眩暈を感じ、床に手を突いて辛うじて体を支えた彼を、声の主は呆れたように見下ろす。
「無理すんなよ。生身の人間があんだけエーテルに浸かってたんだ、かなりしんどいだろ」
 孝介は揺らぐ意識を叱咤して顔を上げる。そこには引き離された時と同じ、八十神高校の制服を纏った陽介が立っていた。背景には見覚えのある商品棚や酒樽、ここはコニシ酒点だ。勿論、現実のではなく、テレビの中の異様な商店街のだが。
 しかし孝介には、目の前の彼が陽介ではないことがすぐ分かった。向けられる声に宿る色が違う。彼の声はこんなに鋭く、激しい熱を孕んではいない。何より、瞳がヘーゼルではなく金色に爛々と輝いている。これは影だ。暗部も含めて彼自身だと認めているが、何故今、このタイミングで陽介の影が自分の前に姿を現したのかが分からず、孝介は警戒しながら口を開いた。
「陽介、は」
影は呆れたように肩を竦めてみせる。
「なんだ、もう分かっちまったのかよ。つまんねーの。…安心しろ、無事だ。残念ながら分かっちまうんだな、これが」
安堵に息を吐いた孝介に、やわらかな癒しの光が降り注ぐ。心地よさに目を閉じながら、孝介は思考を巡らせた。
(一度は受け入れてペルソナになったはずの影が出てくるということは、陽介は何かまた抱え込んでいるのか?オレが、あいつに頼りすぎているからか?)
 11月からの自分は相当に弱っていて、仲間が、特に陽介がいなければ息の吸い方すら分からなかったような有様だ。相当に醜態を曝した自覚がある。やさしい彼はきっと己を責めたのだろう。特別捜査隊のリーダーに任命し、事件に巻き込んだのは自分なのだと。それとも、男同士で愛し合うというアンモラルな関係に悩んでいるのだろうか。繊細で、いささか内罰的すぎる陽介は、孝介が思いもよらぬ方向に物事を解釈して沈む時がある。最近は落ち着いているように見えていたのだが、考え始めるとどんな些細な要因でも陽介を傷付ける棘に思えてきて、孝介は唸った。スサノオはお見通しとばかりに溜息を吐く。
「…お前、なんか俺に対してすげー失礼なこと考えてんだろ。言っとくけど、最近の俺は割と好調なんだからな!んなに弱くねぇよ」
「じゃあ、なんで」
スサノオは、にやり、と猫のように気まぐれで、婀娜っぽい笑みを浮かべた。彼は頭上を指差して朗々と、歌うように言う。指の先は陽介が自身の影と向かい合った時の戦いで天井の一部が崩れ、空が覗いていた。梁や木材の隙間から見えるのは滴る血のような赤と、不気味なほど大きな満月だった。そのおそましさに孝介は戦慄する。
「今夜は狂乱の夜!影の力が一番強くなる日!つまんねぇ宿主に縛られる必要なんてねぇ、俺らは自由なのさ」
 ただでさえ不可思議なこの世界には、住人の彼らしか分からないルールがある。ペルソナは表裏一体、自分達のことは否応なしに彼らに曝け出されているのに、彼らのことは分からないことの方が多いのだ。理不尽さを感じつつも、孝介は必死に頭を巡らせた。
「つまり、今晩限定で、ペルソナが本人から独立することができるんだな?だからお前は陽介から離れてここにいる」
孝介は意識を集中し、身の内に宿したはずの12に仮面の気配を探った。しかし誰の気配も感じられず、からっぽの引き出しがあるだけだ。どうやら皆、陽介の影同様に一人歩きをしているらしい。スサノオは下手な口笛を吹く。
「さっすがセンセイ、理解が早いな。ま、お前らの世界で月食っての?その日だけなんだけど。俺らにとっちゃお祭りみたいなモンでさ、だから皆すげぇコーフンしてる」
 す、とスサノオの足が動いたかと思うと、肩に衝撃を感じて孝介は固い床に仰向けに倒れ込む。蹴られたのだ。文句を言うよりも、起き上るよりも早く、スサノオは孝介の下肢の上に座り込んで動きを封じた。細い体を退かそうと身動ぎをするが、ペルソナのない状態ではシャドウには敵わないらしく、スサノオはぴくりとも動かない。
「陽介…いや、スサノオって呼んだ方がいいのか。退いてくれ。陽介を探しに行かないと」
 繋いだ手が離れた瞬間の喪失感が蘇る。彼もエーテルの波に飲み込まれたはずだ、無事と言われても自らの目で確かめるまでは安心できない。それに、スサノオはシャドウ達が興奮していると言っていた。流される前に聞いた咆哮、膨れ上がった狂騒の気配を思い出せば、ますますもって陽介を一人にしておく訳にはいかない。焦る孝介に、金色の瞳が揶揄するように向けられた。
「そんなに、俺が大切?」
「当たり前だろう」
即答すると、スサノオは艶やかな笑みを唇に刷いた。滅多に見ることのできない表情に思わず目を奪われた孝介の前で、スサノオはゆっくりと、見せつけるように右手で自らの制服のボタンを外し始める。どうしていいか分からず硬直していると、ほっそりとした左手が明らかな情欲の気配を持って性器を撫でた。びく、と体を震わせた孝介にスサノオは笑みを深くする。前を開いた上着を脱ぎ捨て、シャツをめくり上げ、誘うように白く平らな腹を自らの手で辿る様に、時と場合も忘れて孝介は欲情しかけた。だが辛うじて理性でもって本能を抑えることに成功する。
「スサノオ、やめ」
「ヤだね」
 金属の触れ合う音がしたかと思うと、既に勃ち上がりかけていた性器が掴まれ、外気に触れる。スサノオは自らの制服の下を下着ごと脱ぎ捨て再び孝介の上に跨り、天を向いている自分のものと孝介のものを一緒に掌に包んだ。直接的な刺激にぞくぞくとした快感が背筋を駆け上がり、孝介は小さく呻き声をあげる。大きく、固くなった性器を陽介の影はいとおしそうに握り締め、上下に動かし始めた。
「っ、あ…」
「いーい声。なぁ、しよう?俺、お前が欲しくてたまんねーんだ。いつも嫌々言ってるけど、こいつ、ホントはお前に滅茶苦茶にされてくて仕方ないんだぜ。すげー淫乱なの。でもさ、俺をそうしたのはお前で、お前はそんな俺ごと、俺を愛してくれてんだろ?だったら責任取って、ちゃんと満足させてくれよ」
「…でも、今は」
言葉を濁す孝介に、スサノオは嫣然と微笑む。
「言っただろ、今夜は狂乱の夜。本能のままに目合いあい、貪りあえばいいのさ。その気にさせてやるよ」
 金色の瞳は情欲に濡れ、爛々と輝いていた。興奮しているというのは嘘ではないようで、触れてもいないのにそのすべらかな頬はうっすらと上気し、猛った先端からは先走りをとろとろと零している。彼は孝介の学ランのポケットに手を突っ込み、中に入っていた小さなハンドクリームの容器を取り出す。数日前の情交で使用したのが筒抜けだ。持ち主へ断りなく蓋を開け、半分ほどに減っていた中身を惜しみなく掬うと、スサノオは腰を浮かせ、自らの菊座に指を挿入して馴らし始めた。
「ふっ、あ、ん」
 彼自身の体のせいで後ろがどうなっているのかは見えないが、スサノオは左手を孝介の腹に突き、右手で抜き差しを繰り返している。その顔は快楽に歪み、腰は淫らに揺れていた。がちがちになった性器が孝介のものを煽るように擦り合わされる。
「んッ…」
「な、あ、っ、入れたく、なんない?入れてくれねーの?」
ぐちゅぐちゅという卑猥な水音と、スサノオの荒い息遣いがコニシ酒店にやけに大きく響いた。唯一身に纏っているシャツの裾を、今にも達しそうなほど張りつめた性器が押し上げている。孝介は突き上げたい衝動を歯を食いしばって必死に耐えた。頑固な孝介にスサノオはじれったそうに頭を振ると、後ろに指を差し込んだまま、もう片方の手で自身を握り自慰を始める。金色の瞳は色欲に溶け、理性の色はもうなかった。
「き、もちい、こ、すけ、あ、ダメっ、こうすけ!イっちゃう!」
 目の前で、羞恥心が強くなかなか素直に乱れてくれない恋人が、自分の名前を呼びながら自慰をしている――例えそれが彼の一部だとしても、淫靡すぎる光景についに孝介の忍耐の糸が切れた。我慢ができなくなり、孝介は形のよい足を撫で上げる。スサノオは嬉しそうに体を震わせ、甘い吐息を零した。そのまま掌を上へスライドさせ、薄い尻をやわやわと揉んでる。傷付かないよう力加減をしてやったというのに、剥き出しになった恋人の欲は「もっと強く」と求めてくるので、孝介は遠慮なしに尻に指を食い込ませた。
「いっ、あ…!」
 震える肢体も、嬌声も、何もかもが陽介と変わらない。けれども今、自分の上に跨る彼からは気を抜けば食われそうな獰猛な気配を感じる。だがこれも陽介の一部だ。否定することなどできないし、する気もない。今頃独りで泣いているかもしれない彼のことが気にかかったが、このままだとスサノオは満足するまで離してくれないだろう。孝介は思考を切り替え、攻めに転じた。
「うあっ!」
腹筋の力だけで上半身を起こし、スサノオの後ろから彼の指を引き抜く。十分に解れたそこに孝介は指三本を突っ込み、容赦なく動かし始めた。
「いたっ、あ、あ、んッ!」
「酷くして欲しいんだろ?お望み通りしてあげるから、好きなだけイっていいよ。ほら」
ぐ、と陽介相手には体を気遣って入れないような奥深くまで指を押しこみ、ばらばらに指を動かす。けれども陽介が一番好きなところはあえて突いてやらない。それでもスサノオは痛みと歓喜の混じった悲鳴を上げた。
「もっ、と、もっと奥まで、き、て!」
「もっと?知らないよ、壊れたって」
 望まれるままに孝介はもう一本指を増やし、抜き差しを繰り返す。ふいに首筋に痛みを感じたかと思うと、スサノオがシャツの襟繰りを掴んで肌を露出させ、噛みついていた。涙と唾液でぐちゃぐちゃになった顔で挑発するように微笑まれ、孝介は余裕をかなぐり捨てて指先で前立腺を突いた。スサノオは白い喉を仰け反らせて叫ぶ。
「あ、ああ、いや、イっちゃう!イっちゃうからぁ!!」
「イっていいよ」
「ゆび、やだぁ!お前のが、いい、お前の入れてくれよ!」
 スサノオは泣きながら、今にも弾けそうな孝介のものに手を伸ばす。情人の痴態に煽られ、吐息がかかっただけでも暴発してしまいそうな自身に触れさせる訳にもいかず、孝介はスサノオの男根の根元をきつく握り締めた。それだけで達しそうになりながら、けれども孝介の指でせき止められているため射精することができず、スサノオは宿主とは大分印象が異なる、勝気な瞳を歪ませる。
「はなし、て!イかせて」
「だめ」
「やだぁあ、お前の、ほしいのに!なんで、ゆびっ」
「オレのは陽介のだから。お前がまた陽介と一緒になったら、いっぱいあげるから、ね」
狂ったように身を捩り、自分を求めてくるスサノオの姿は、孝介の支配欲と嗜虐心を酷くそそった。孝介は陽介を屈服させたいという欲望のままに、感じる部分を抉るように刺激する。同時に前を苛んでいた手を離してやれば、スサノオは女のような高い声で鳴きながら、白濁した性を巻き散らして達した。
「ひあ、っ、あああ――!!」
 まだ射精を続けているスサノオの体を押し倒し、ほっそりとした両足を持ち上げ、孝介は自身を彼の太股に挟ませる。二、三度ピストンを繰り返しただけで、限界に近かった孝介のものは呆気なく弾けた。
「っ、あ…!」
熱い迸りが、シャツがめくれ上がって露わになった陽介の腹を汚す。全てを彼の上に注ぎ終え、体を離した孝介は、未だ絶頂感から抜け出せず恍惚の表情で天井を見上げているスサノオを見下ろした。シャツだけを辛うじて身に纏い、腹から下肢を精液に塗れさせ、手足を無防備に投げ出し床に転がっている様は、まるで強姦された後のようだ。その姿を憐れだと思うよりも先に欲情してしまっている自分に気付き、孝介は自嘲の笑みを浮かべた。
 「………ちくしょ、お前、ズルい…」
ようやく回復してきたらしいスサノオの恨みがましい視線を受けながら、孝介は素早く身形を整える。のろのろと身を起こした恋人の影に、持っていたハンドタオルと、脱ぎ散らかした服を渡してやり、彼は背筋を伸ばして言った。
「さぁ、陽介を探しに行くぞ」
「…………お前、ほんと、ひどい男だな」

 文句を垂れるスサノオを急かし、コニシ酒店を出る。店の中の静けさが嘘のように、商店街はシャドウの気配と喧騒に満ちていた。あちこちでエーテルが川を作っており、濃いエネルギーの粒子を感じる。スサノオは腰を摩りながら言った。
「仕方ねーから、アイツん所まで連れてってやるよ。なんか余分なのまで着いてるみたいだけど」
「陽介の場所が分かるのか?」
食い付いた孝介に、スサノオは拗ねた顔を作った。
「そりゃな。繋がりが切れた訳じゃねーし。…あいつは今、おまえん家に向かってるぜ。ま、妥当な判断だな。生身の人間には今のこっちの世界は危なすぎるから、影響の少ない場所でじっとしてんのが一番いいだろ」
彼はひとつ大きな伸びをしてから、エーテルの流れを避けるようにして歩き出す。後を追う孝介にスサノオは首だけ巡らせた。
「孝介。お前今、ペルソナねーってことちゃんと覚えとけよ。ただの人間なんだからな」
「ああ。分かってる。お前がちゃんと守ってくれるんだろ?頼りにしてるよ、相棒」
にこり、と笑みを付けて返せば、スサノオは顔を赤くし、吐き捨てるようにして叫んだ。
「っ、お前、ほんっっっと、ずるい男だよ!!!」




**********




 陽介達の堂島家への行程は、思いの他難航した。まるで堤防が決壊したかのように至る所でエーテルの川ができており、何度も迂回を強いられたというのもあるが、一番の原因はシャドウだ。
「…鬱陶しい」
イザナギが――孝介本人と区別を付けるため、陽介は了解を取った上で彼の影をそう呼ぶことにした――右手を翳し、振り降ろすと、神の裁きが幾筋もの柱となって天から地に落とされる。二人を囲んでいたシャドウの群れは、あるものは逃げ出し、あるものは感電して動けなくなった。消滅してしまったものもいる。
 道が開け、彼の後ろで剣を構えていた陽介は、眼だけで追従を命じられて大人しく従った。現実と変わらないアスファルトの地面を、自らの足で踏みしめて歩く。戦闘の必要性が出てきたというのもあるが、嘆願して横抱きでの移動は勘弁してもらったのだ。
 狂乱の夜、とイザナギは言った。その言葉通り、今夜のシャドウは例外なく興奮していて、生身の人間である陽介を認めるや否や凄まじい勢いで寄ってくる。しかし好戦的という訳ではなく、どこか注意力散漫で、少し脅してやればすぐに逃げ出すのだ。やはり一番的確な表現は「興奮」だった。落ち着きがないのだ。それが分かっているのかイザナギも威嚇程度の攻撃しか加えていないが、エンカウントする度に眉間の皺が深くなり、放たれる雷撃の威力が少しずつ増している。宿主とは違う、分かりやすい苛立ちに陽介はこっそりと苦笑した。
「キリねぇな」
「ああ」
 少し歩き、もうすぐで商店街を抜けるという所でまた数十匹のシャドウに道を塞がれ、イザナギは隠そうともしない倦じ顔で雷を呼ぶ。彼の背中越しに稲光を眺めながら、陽介はここにいない相棒の身を案じた。
(あいつ、無事かな。そりゃ、俺より強いけど、ペルソナがいなけりゃただの人だし。俺がイザナギに助けられたみたいに、誰かのペルソナに助けてもらえてたらいいんだけど)
イザナギに孝介のことを尋ねても、無事だと、心配の必要はないとしか返って来ず、道行を急かされる。探しに行きたいと言ってもミイラ取りがミイラになると諭され、また、今は彼に頼るしかないため陽介は大人しく従うしかなかった。今はイザナギの言葉を信じるしかない。
 どぉん、と腹に響く音と共に、神の鉄槌が下された。衝撃に吹き飛ばされたアブルリーが一匹、陽介のすぐ近くに叩き付けられる。慌てて剣を構えたが、今は只人の陽介とシャドウとでは、後者の方に歩があった。アブルリーがその巨大な下でもって陽介の顔を舐める。びりりとした痛みを頬に感じ、陽介は顔を顰めながらも、手にした得物で異形を真っ二つに切り裂いた。シャドウは耳障りな悲鳴をあげながら塵になる。
「陽介!」
「へーき。掠り傷だって」
 しかしイザナギはその金色の瞳に明らかな殺意を宿らせ、今までとは違う動きで腕を振るう。彼の口からは陽介にはよく聞き取れない難解な言葉の羅列が漏れ、一言一言刻まれる度に空気が圧縮されていくのが分かる。その感覚には覚えがあった。陽介は慌てて彼の背中に退避する。緊張が極限まで高まったところで、イザナギは静かな声で力ある言葉を紡いだ。
「――メギドラオン」
隕石のように万物を打ち消す抗力が降り注ぎ、辺りに蠢くシャドウどころか建物も巻き込んで消滅させる。轟音、そして粉塵が収まった後、二人の周りは荒れ野になっていた。生き物の気配はひとつもない。圧倒的すぎるイザナギの力に、陽介は呆れ半分、畏れ半分に呟く。
「…やりすぎだろ、これ」
「お前に傷を付けたんだ。当たり前だろう」
 平然と言うイザナギに陽介は頭を抱えた。陽介も孝介も男だ。自分は彼に比べれば劣る部分が多いが、それでも一方的に庇護されなければならないほど弱くない。親友でも、相棒でも、恋人であっても、彼とは常に対等でありたいと陽介は願っている。だから付き合うきっかけとなった事件の際、彼の言った「守る」という言葉に過敏に反応し、大いに揉めたのだ。以来、孝介は気を使ってくれているようだが、やはり内心では陽介を真綿で包む様に痛みから遠ざけたいと思っているのが、今のイザナギの言動でよく分かった。
(ったく、過保護なんだよ)
好きだから守りたい、その気持ちはよく分かる。だが孝介の想いの強さが、陽介には怖かった。彼の想いが自分に、自分だけに向いていていいのか。自分の存在が彼の世界を狭めているのではないのか。愛の言葉を交わし、互いの体温に触れ、幸せを感じれば感じるほど不安も増してゆく。孝介はいつも先回りしてその不安を取り除いてくれていたが、今ここに彼はいない。いるのは加減を知らない彼の影だけだ。陽介ははぁ、と溜息を吐き、頬に僅かに滲んだ血を手の甲で拭った。
「こんくらい大したことねーよ。つかお前も雑魚相手に全力出すなっての。温存しと」
 陽介の言葉が終るのを待たず、イザナギはその端正な顔を近付けると、陽介の傷口を舐めた。ざらざらした舌の感触に陽介は思わず体を震わせる。
「っ、あ、ちょ」
「消毒、しないと」
イザナギは執拗に陽介の頬を舐め、そればかりか後頭部に手を回して動きを封じると、抗議のために開いた唇に舌を押し込んで来る。そしてそのまま陽介の咥内を蹂躙し始めた。キスというには荒々しく、イザナギは逃げる舌を甘噛みし、執拗に絡める。陽介は獣に貪られているような錯覚を覚えたが、イザナギが孝介の一部だと分かってるためか、恐怖も嫌悪も湧かなかった。それどころか何もかもかなぐり捨てて彼に求められている気がして、心が、体が高揚してしまう。
「陽介」
 鼓膜を震わせる声も、感じる体温も愛撫の仕方も孝介そのもので、陽介の抵抗は弱々しいものとなる。彼のシャツを握り締めて逞しい体に縋り、金色の瞳を直視できる自身がなくて瞼を閉じていると、ふいにちくりとした痛みを首筋に感じた。
「っ」
体を跳ねさせれば、労わるように同じ場所を舌が辿る。別の生き物のように器用な彼の舌は、項を辿って耳に移動し、唇で食まれ、熱くぬめった舌で耳の穴を蹂躙された。耳が弱い陽介はそれだけで息も絶え絶えになり、立っていられなくなる。
「や、ぁ、ダメ、だって!こんなとこ、で」
 明らかな情欲の気配に陽介が首を振っても、イザナギの動きは止まらなかった。表情は変わらない、しかし彼の金色の瞳は爛々と輝いている。彼は辛うじて残っていた電柱に陽介の体を押しつけると、手早く制服の前を肌蹴させ、シャツの隙間から手を侵入させる。かり、と指先で胸の果実を引っ掻かれ、陽介は甘い悲鳴を上げた。
「ひあっ」
「陽介、欲しい」
低く、焦げそうなほどの熱を孕んだ声でイザナギが囁く。その声だけで陽介は動けなくなってしまう。イザナギは胸の果実を苛みながら、固くなり始めている陽介の下肢に自分のもの擦り合わせてきた。感じた熱さと固さに陽介は思わず体を強張らせる。ほぼ完勃ちだ。
 イザナギの手がシャツから抜かれ、陽介のベルトにかかる。制止する間もなく前をくつろげられ、露わになった性器を跪いたイザナギは躊躇なく含んだ。
「んっ…!あっ、あ、やめ」
一ヶ月ほど前の記憶が脳裏に蘇る。あの時も彼はこうやって、自分のものを口淫したのだ。あまりの気持ちよさに意識を飛ばしそうになった陽介を立ち返らせたのは、視界に入る荒れ野と幾対ものシャドウの視線だった。イザナギがその力を見せつけたせいか、寄ってくるものは一匹もいないが、彼らは遠巻きに自分達を、興味深そうに眺めている。同じ男に愛撫を受けて悦んでいる自分の姿を、誰かの影が見ているのだ。あまりの羞恥に眦に涙が浮かび、陽介は必死にイザナギの頭に指を差し込んで押し返そうとした。
「頼む、から、やめてっ、くれ!見られてる!!」
 しかしイザナギの返事は嫣然とした微笑みだけだった。彼は見せつけるように陽介の性器にねっとりと舌を這わせ、先端から滲んだ先走りを啜る。込み上げてくる射精感を陽介は腹に力を入れて必死に堪えたが、限界が近いのが分かったのだろう、イザナギが意地悪く笑った。
「陽介、見られて興奮してる?いつもより早い」
「うっ、せえ!つか、やめ…あッ」
「見せつけてやろうよ。オレの陽介はこんなに可愛くて、男のくせに男に咥えられて喜んじゃって、今も後ろが物足りなくてヒクヒクしてるんだって」
「…!」
 反論しようとした陽介は、一際強く性器を吸われて声にならない悲鳴を上げた。彼の悪戯な指がズボンの上から後ろを突く。指摘された通り、受け入れることに慣れ始めたこの体は前だけの刺激では足りないと先程から疼いていた。浅ましい反応に陽介は涙を滲ませるが、それでもイザナギの攻めは止まない。孝介と同じ舌技の前に、快楽に弱い体は呆気なく陥落した。太股が震え、熱が腹の底から湧き上がって来る。
「ダメ、出ちゃ…!」
「いいよ。ああ、でも皆見たいみたいだから、見せてやろうか」
 イザナギは顔を離すと、陽介の背後に回り込み、後ろから陽介の性器を握って数度扱いた。指の腹で雁首を擦られ、陽介は高い悲鳴を上げながら達する。みっともない自分の声を聞きたくなくて口を抑えようとしたのに、巧妙に絡められたイザナギの腕がそれを許してはくれなかった。異形のオーディエンスに向かい、陽介は精液を巻き散らす。びゅく、びゅく、と噴き出た精子は、焦げ付き溶けた黒いアスファルトの上でやけに目立った。
「………っ、ふ…」
 情けなさやら恥ずかしさやらで居た堪れなくなり、陽介はぽろぽろと涙を零す。後ろから「ごめん」と声が聞こえ、熱い唇が雫を伝った。ぐず、と鼻を啜り、陽介は緩慢に首を振る。
「も、いいから…離して」
「…ごめん」
 しかし返ってきたのは更なる謝罪だった。怪訝に思う暇も与えられず、今度は電柱に抱き付くようにして体を押しつけられ、ズボンが下着ごと膝下までずり下ろされる。腰を抱え上げられ、ひくつく後ろに熱くて固いものが当たり、これからされる行為を察して陽介は必死に抵抗した。
「ばっ…!お前、何考えて」
首を巡らせた陽介は、すぐ後ろにあった孝介の、正確には彼の影の顔を見て言葉を失う。同じ男の自分が見惚れるほどの端正な顔からは余裕が消え去り、獰猛な雄の気配が滲み出ている。理性も気遣いも全てを飛ばした、銀ではなく金の眼差しはひたすらに自分だけを求めて注がれていて、達したばかりだというのに体が疼く。圧し掛かってきた体は熱く、触れられた場所から火がつくようだった。
「お前、も、興奮、してんの?」
返事の代わりに果てた性器に長い指が絡み、馴らしてもいない後ろに男のものが割入ってきた。潤滑油もゴムもない状態で彼を受け入れたらどんな惨事になるか分かってはいるが、これほどまでに孝介に求められているならば自らを捧げていいと思ってしまう。どのみち、今の自分ではイザナギには敵わない。覚悟を決め、少しでも楽になるよう力を抜いた陽介の後に、孝介の楔が打ち込まれようとした瞬間――緑色の風が責めるように二人の周りで巻き起こった。
「?!」
 飛散した魔力の気配に、陽介は嫌というほど覚えがあった。スサノオだ。背後からイザナギが舌打ちをしたのが聞こえた。やがて小さな竜巻は収まり、緑の檻の外側に二つの影が見えてくる。

 「――随分と尻軽だなぁ、俺?」

 そこには金色の瞳を冷たく輝かせたもう一人の陽介と、恐ろしいほどの無表情でこちらを凝視している孝介の姿があった。




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