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君しかいらない その後の話 ※頂き物

なんと!「冷蔵庫はいつでも2つ」のにこ吉さんから超素敵小説をいただいてしまいました!!!!!!!(幻水的強調)あああああありがとうございます!!!
当サイトのげろあまーなにょたバレンタイン小説「君しかいらない」のその後です。まさかにょたを書いていただけるとは!にょたを書いていただけるとは!!しかもセンセイが男らしくて陽介もちょうかわゆいのですよ!きっとにこ吉さんはわたしを嬉し死にさせるつもりなんだとおもいます。
という訳でぜひぜひ読んでくださいませ☆

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『君しかいらない その後の話』




(うーやっぱりなんか、変だ)
 教室に着き、いつもの自分の席に座ったものの、まだ月森に愛された体からは違和感が抜けなかった。
(つーか、俺本当に朝から何やってんだ…)
 月森はもうすぐ居なくなってしまう。
 それは事実で、少しでも多く触れていたいのは陽介自身の気持ちでもある。だが、敢えて朝の、あの時間が無い中ではないといけなかった理由はないのではないかと今更ながら考えてしまう。
 机にしがみつくように伏せる。
 そう。
 何故ならば、陽介は。
(恥ずか死ねる!!)
 絶叫したいほど、現在恥ずかしかった。羞恥が一気に襲ってくる。
(だって、いつもの席だぜ。そこに座りながら、体が…って、あああああ)
 家でアレば軽く暴れてしまいそうだ。
「なーに朝から面白い顔してんの?」
「おはよう、花村くん」
「…おはよ」
 いつの間にか登校してきていた二人に声をかけられ、陽介は慌てて机にへばりついていた姿勢を正した。
「てか、あんた寝てていいの?」
 千枝がこそこそっと耳打ちしてくる。
「さっそく、呼ばれてるよ。月森くん」
「え、もうっ」
 言われてみれば、確かに教室に月森の姿はない。
 視線をさ迷わせば雪子がそっと指を指す。
「今、廊下にいたよ」
「そっか」
 もう呼び出しを受けた事実に驚きつつも、実際思ったほど陽介は自分の気持ちが動揺していないことを感じていた。
 それは雪子と千枝にも伝わったようで、二人は一度顔を見合わせた。
「こう聞くのも変だけど…あんた怒らないでいいの?」
「うん」
「月森くんのこと信じてるんだね」
「……うん」
 朝からあんなことをしたというわけではないが、陽介は若干の照れはあったものの素直に頷いた。
(いや、違うか)
 あんなことをしたから、なのかもしれない。
 やっぱり自分はいつだって不安だ。今日という日の力を借りて、ジュネスの彼女達ではなくとも、何人もの人が月森に告白をするのだろう。
 同じ女という立場だからこそ、余計に不安は駆り立てられる。
(けど、あいつは俺が好きなんだ)
 そして自分もあいつが好きだ。
「あ、そうだ。ほら、花村」
「へ」
 顔をあげると、千枝が何かを投げてくる。それをキャッチすれば、なんてことはないチョコレートだ。
 驚いていると、雪子も手に上質そうな小さな紙袋を持っている。
「はい、私からも」
「え、あ。え、え! いいの?」
「いいのって、あんた」
 ぶは、と千枝が笑い出す。
「だって、あんた女でもさ、私らにとっちゃねぇ」
「うん」
 その二人の言葉に、陽介は何故か胸が熱くなった。陽介も慌てて鞄を探る。
「完二に教えてもらったヤツなんだけど、俺も」
「あ、あんたとうとう手作りまで? 私らが既製品だというのに…」
「俺だって既製品がよかったんだよ! けど色々あって」
「でもすごい上手に出来てるね。そっか。完二くんに習うって手があったんだね」
「…オススメ致します。あいつすげぇ上手いし。色々作れるみたいだぜ」
「へー楽しそう」
 二人が自力で作るよりはと、完二に悪いと思いつつも、陽介はそっと完二を宣伝する。
 すると、そばにいたクラスメイトが笑いながら声をかけてくる。
「なんだよ。女子同士で交換かよ」
「俺らにはねーの」
 その気持ちがある意味よく分かり、陽介は心の中で頷いてしまう。バレンタイン。男はやはりチョコが欲しい生き物なのだ。
(確かに天城から貰えってたら羨ましいよなぁ)
 一条なら、この里中から貰ったチョコを本気で羨ましがるだろう。
 しかし、今はこうして二人から貰ったが、自分が男のままであれば実際義理ですら貰えたのかはある意味謎な話だ。
「花村は?」
「へ?」
 ぼんやりと考えていた所、突然名前を呼ばれ陽介は弾けるように顔をあげた。
「本命いたって義理とかさ! お願い!」
「旦那居てもいいからさぁ」
「あはは。今更おせーだろ」
 どっとクラスメイト達が笑う声を陽介はどこか目を丸くして聞く。
(お、れ?)
 変な話だが、自分が誰からか義理チョコをねだられる――月森を抜かして、そんなことがあるとは思ってもいなかったのだ。
「あ、えっと」
「あるわけないだろう」
「おわ! 旦那が来ちゃったよ」
「あったら俺が全部食べる」
「心せまっ」
 月森の真顔の言葉に、クラスメイト達が弾けるように笑い出す。
「…絶対あれ本気だよね」
「うん」
 千枝達が囁く声に、陽介は何故だが少し頬と、それ以上に胸の奥が熱くなる。
「あ。陽介チョコ貰ったんだ」
「おう。ちょっと嬉しいな。女になっても貰えるなんて」
「そうだそうだ」
 千枝がわざとらしく手を叩く。
「申し訳ないけど、リーダーにはチョコないんだ」
「へ?」
 驚いたのは花村だ。
「うん。花村くんに分けてもらって?」
 雪子も笑顔でそんなことを言う。その言葉を聞いて、月森は苦笑いをし、陽介は一瞬驚いた後、弾けるように笑い出した。
 予想していなかった展開だ。笑いながら、何故か涙が少しだけ込み上げる。
 雪子と千枝は笑いながら月森に何かを言っている。
 自然な動作で、陽介はそっと目元を拭った。
(俺、絶対大丈夫だ)
 月森が居なくなれば、絶対寂しいし辛いことも沢山ある。
 だが、ここにはこんなにも心強い仲間がいるのだ。自分のことを思ってくれる彼女らが。
「孝介。どーしてもっていうなら、一口くらい分けてやるけど?」
「……お願い致します」
 千枝と雪子から笑い声があがる。同時に、残念なことにチャイムが鳴り響く。
 皆がそれぞれの席に戻っていく中、月森がそっと陽介の耳元で囁いた。
「二人に先を越されちゃったけど、俺からもあるんだ」
「へ」
「陽介に、チョコ」
 陽介は僅かに目を丸くする。
「…だから、帰り、もう一回うちに来ない?」
「……、行く」
 耳に口付けるくらいそばで、陽介は答えた。
 今日も一日色々なことがあるだろうが、それでもきっと、楽しい一日を過ごせるだろうと陽介は全開の笑みを見せた。

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