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もしも主人公達がアイドルだったら ※ねた

PCのデータ整理してたら、またねたが出てきたので自分メモとして貼っておきます。
お約束的要素満載のアイドルパラレルで、特捜男子がグループ組んでます。例の如くキャラ達がどんな扱いになっていても平気って方は追記をどうぞ。一応ねたとしては完結してます。
私自身があんまりアイドルのこと詳しくないので、プッてなっちゃうことが書いてあるかもしれませんが、笑ってスルーおねがいします!ちょっと調べたけど狭くて深い世界だなぁ…と思いました。
一時期本気でこれで本作ろうと思ってたので、一章目はできあがっているのですが、アイドル設定を細かく考え始めると難しく、自分がのりきれなかったのと、グループ名が決められずにやめたという相変わらずのセンスのなさです。仮で「P4」とかになってますけど、見れば見るほど萎えます。おおお。マネージャーさんがマーガレットさんなのもね。
一番書きたかったのは、アカペラで歌う主人公と、最後の陽介をお姫様だっこして花道を駆ける(重さ的に多分走れないですが)主人公です。ねたでも書けて満足した!逆にねた書いたから満足しちゃったのかも!

メッセージありがとうございました!あんなねためもに反応いただけてうううれしいです!ぶわっ

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1、
 空調が利いたリビングの、まだ新しい皮張りのソファ。その座面に体を埋め、陽介はひたと画面を見据えていた。
 素肌に纏うのはブランケットだけ。ハニーブラウンの髪は湿り気を帯び、ぺたりと項に貼り付いている。エアコンから噴き出す冷気に体が冷えていくのも気にせず、陽介はただただテレビの中で歌い踊る一人の男の姿を追い、声に耳を傾けていた。
 眩いばかりの光に照らされ、華麗な衣装に身を包み、銀糸の軌跡を描きながら舞う彼。青年と呼ぶには少し幼く、けれども、少年と呼ぶには大人びている、羽化の途中にあるどこかあやうさを残した肢体。ほぼ完璧に左右対称の整った顔に埋め込まれているのは、一度見たら忘れられない印象的な銀灰の双眸。そして、薄く形のよい唇で囁かれるのは、涼やかな甘い音。神に愛されたとしか思えない、老若男女問わず、見る者全てを虜にする力を持った彼の名前は、月森孝介という。
(あいつを嫌える奴なんか、この世にいないだろうな)
 物憂げに伏せられていた瞳が誘うようにカメラを捉え、長い指が優美に空を掻く。一見、何気ない動作だが、それは計算し尽された動作だ。指先ひとつにも力が込められ、髪が揺れるのも、衣装がたなびくのも、どうすれば最も魅せることができるか、彼らは叩きこまれている。もっとも、孝介の場合は天性の才もあるが。彼は自分の魅せ方をよく知っている。
 無数のライトが輝くきらきらしい世界の中でも、彼は一等輝く宝石のようだ。陽介は魅せられるまま、ほう、と、熱に浮かされたような息を吐いた。
 後奏が止み、拍手と歓声がスピーカーから弾き出された。メンバーは素早く次の曲の配置に着いたが、しかしいつまで待っても前奏が聞こえてこない。聴衆のざわめきが次第に大きくなる。液晶に映し出された孝介の顔には困惑が浮かんでいたが、やがて瞳に強い意思の色が宿った。
 カメラが引き、会場の様子が映し出される。超満員のホール、その中央に設えられたステージの更に中心へ、孝介はゆっくりと進み出た。ひとつ大きく息を吸った彼は、始まりの音を発する。それが外れていないこと、声が届くことを確かめるように目を細め、ゆっくりと歌い出した。
 瞬間、ぞくり、と肌が粟立った。
 ア・カペラ――伴奏のない楽曲。機材のトラブルにより音源からの出力が一時的にできなくなったこの時、会場の混乱を沈めるため、孝介はトークではなく歌を選んだ。効果は覿面だった。
 場を満たしてゆく美しい調べに、誰もが耳を奪われ、息を潜めて聴き入る。歌詞に込められた感情に心を揺さぶられた何千もの視線が、孝介だけに注がれる。もう幾度も見返したはずなのに、音楽で人の心を掴めることを証明した、奇跡のようなシーンから目が離せない。
 「――こら、いつまでそんな格好してるんだ。また襲われたいのか」
背後から伸びてきた腕は、陽介が抱え込んでいたリモコンを奪うと、一時停止ボタンを押してDVDの再生を止めてしまう。不服を顕わにするために振り返った陽介だったが、額に落とされたキスひとつで文句は霧散してしまった。呆気なく陥落した陽介に、下穿きだけを身に付けた孝介は満足そうに笑う。その微笑みは、映像よりも遙かに魅力的で、艶めいていた。
 知り合ってから数年が経ち、恋人として付き合っているというのに、彼の笑顔ひとつで陽介の胸は初恋の頃と同じようにときめいてしまう。触れられるだけで体に悦びが満ち溢れる。それを分かっていないのか、分かっていながら気付かないふりをしているのか、孝介は陽介の隣りに腰を下ろし、シーツの中へ潜り込んできた。
 シャワーから上がったばかりの彼の肌はあたたかく、湿り気を帯びている。対照的に、クーラーによって冷やされ、乾いた陽介に、孝介は眉を潜めた。
「冷えてる。風邪引いても知らないぞ」
「ヘーキだって、んなにヤワじゃないし。お前も一緒に見ようぜ」
熱を分け与えるように回された腕の中で身動ぎをし、リモコンを奪い返すことに成功する。再生ボタンを押せば、再び孝介の歌が聞こえ始めた。すぐ横にいる本人は、いささかきまりが悪そうな顔をしている。彼曰く、この時は調子に乗っていたとのことで、恥ずかしいらしい。
 画面の中では、独唱を続ける彼に寄りそう影がひとつ。自分だ。揃いの衣装を着た陽介は孝介に目配せをし、サビに向けて盛り上がりつつあるBメロから加わった。最初こそ僅かにずれたものの、二人の声は見事に調和し、ゆったりとしたバラードを彩る。ぴたりと重なる互いの呼吸に、自分達は目だけで笑っていた。
 サビに入った途端、更に二色の音が加わる。完二とクマだ。もとよりアンサンブルに主体を置いて練習していた曲だけあり、伴奏がなくとも四人は見事に一番を歌い切ることができた。サビの余韻が消える直前、音源が回復し、予定通りと言わんばかりに間奏が流れ出す。インカムから聞こえたPAの指示により、何事もなかったかのように自分達は歌い、踊った。
 最後の一音が消えた途端、会場を揺るがすほどの賛美が贈られる。あの時覚えた達成感と、ライブならではの高揚は、今でも忘れることができない。舞台の上では、興奮のあまり抱き着いた陽介を、孝介が全開の笑顔で抱き返していた。己の全身から滲み出ている孝介への好意を目の当たりにし、恥ずかしさから陽介は目を逸らす。孝介はにやり、と口の端を吊り上げると、再びリモコンを奪取し、今度はテレビの電源ごと落としてしまった。
「見返して、改善点を見つけるのも大切だけど。折角の一日オフなんだし、DVDの中じゃなくて、横にいるオレを見てよ」
つう、と大きな掌に脇腹を撫でられ、陽介の体は意思とは関係なく跳ねた。反応に気を良くしたらしく、孝介はやわらかく微笑みながら陽介をソファに押し倒す。長い睫毛に縁取られた銀灰の瞳には、散らしたはずの情欲が再び宿っていた。
「…また、シャワー浴びるのかよ」
「今度は一緒に浴びよう。ああ、風呂でするのもいいな。こことどっちがいい?」
「どうせどっちでもやるんだろ。っ、あ」
 小一時間ほど前まで散々弄られていた乳首を唇に含まれ、陽介は鳴く。男にとっては飾り物のようなそこは、恋人によってすっかり性感帯へ変えられてしまった。内側から熱を発し始めた体を持て余すように擦り付ければ、孝介は笑みを深くする。陽介は瞼を閉じ、愛しい男の愛撫に身を委ねた。




**********



 陽介は某芸能事務所に席を置く、いわばアイドルである。
 同じ事務所に所属する孝介、完二、クマと共に『P4』というグループを組んで活動しており、最近ようやく売れ始めた。努力もしたが、運に恵まれた所が大きい。幼少期から芸能界にいても、ろくに日の当たる場所に出られず去ってゆく者は多くいる。それに比べれば、事務所の強力なバックアップがあったとはいえ、スカウトから二年ほどでデビューまで漕ぎ着けた自分達は遙かに幸運だろう。
 女性アイドルに比べ、男性アイドルの世界は門戸が狭い。特定の大手事務所や海外のグループにシェアを占められ、それ以外は殆どと言っていいほど目を向けらないのが現状だ。人気がなければ生き残ることはできない。だから男性アイドルを専門にプロデュースしている古株の会社以外は、「アイドル」と呼べる男性を育成し、抱えてゆくのを諦めている。結果、競争のない市場が出来上がってしまった。そんな日本の芸能界を憂いた社長が、業界に一石を投じようと育ててきたのが自分達だ。
 高校一年の文化祭で、軽音部の発表でステージに上がっていた陽介と孝介を社長自らが見染め、スカウトされた。テレビの中の華やかな世界に人並みの憧れはあったが、そんな上手い話があるはずもないと、最初は二人とも断った。だが、幾度も尋ねては説得を繰り返す社長の熱意に胸を打たれ、弟のクマと、たまたま遊びに来ていた幼馴染の完二まで巻き込んで、事務所に入ったのが高校一年の終わり。クマと完二がまだ中学生だったこともあり、学業と兼ね合いを付けながらもレッスンを重ね、高校三年の終わりに本格的なデビューを果たした。
 現在、陽介と孝介は同じ大学の一年で、完二は高校三年、クマは二年だ。知名度が上がるにつれてプライベートな時間はどんどん減り、学校にも行けない日があるが、マネージャーは優秀で、できる限り学業を優先したスケジュールを組んでくれている。楽しばかりではない、辛いことも、嫌な思いをすることも多々あるが、日々はとても充実していた。
 ファンはアイドルとして偶像化された『花村陽介』を求めていると理解はしているが、必要とされるのは嬉しい。自分の存在が誰かを楽しませ、少しでも支えになれるのならば、苦労も報われる。それに、P4として活動している間は、孝介と離れずに済む。可愛い後輩の完二や、養子ではあるが弟のクマとも一緒にいられる。つまり、芸能活動は陽介にとって、マイナスよりもプラスの方が大きいのだ。だから続けていられる。
孝介を始め、他のメンバーも自分なりのやりがいを見つけたようでモチベーションは高く、P4は今、勢いに乗っていた。

 「お前一人だけの長期取材?」
オフが明けた朝、朝食の席で恋人から告げられた言葉に、陽介は思わず頓狂な声を出してしまった。
 ダイニングテーブルの上に用意されたモーニングプレートには、陽介の好きな厚切りの食パンが載り、スクランブルエッグにウィンナーとレタスが添えてある。デザートにはブルーベリーソースが掛ったヨーグルト。全て孝介が準備してくれたものだ。大学進学を機に実家を出た陽介は、孝介の父親が所有している都内のマンションの一室で、孝介と同居していた。実家にいても仕事や通学に然程不便はなかったし、現にクマは今も家にいるが、少しでも長く孝介との時間を確保したかったのだ。
 幼い頃から両親が留守がちで家事全般をこなしていた孝介とは違い、母親の手伝い程度しかしてこなかった陽介はあまり役に立っていない自覚があるが、二人暮らしは概ね上手くいっている。簡単な料理なら作れるようになったし、掃除も洗濯も覚えた。互いの息遣いをすぐ側に感じ、一番遠くても十数歩の距離に相手がいる。これを幸せと言わず何と言うのだろう。だが、孝介の言葉によって、満ち足りた日々に陰りが落とされた気がした。
 カフェオレが注がれたマグカップを置いた彼は、陽介の対面に座って二度目の説明をする。
「そう。急で悪いんだけど、昨日の夜に連絡が来たんだ。映画の仕事が貰えることになった。詳しくは皆が集まってからマーガレットさんが説明してくれるけど、これから二、三ヶ月、留守が多くなるのと、来月あたり、三週間くらいロケに行くとになると思う」
「って、三ヶ月後にはコンサートだぞ?! 新曲のリリースも立て続けにあるし、お前抜きでやれってのか?」
思わず食ってかかったが、涼やかな声で「落ち着け」と諭され、ひとまず椅子に収まる。昨晩、ベッドで甘いひと時を過ごしている最中に掛って来た電話の内容は、この話だったのだ。
 くしゃり、と前髪に指を差し込み、陽介は息を吐く。依頼は全て事務所を通してオファーされる。自分達を管理する敏腕マネージャーが、コンサートや新曲について考慮を漏らしているはずはない。つまり、今回の孝介へのアサインは、P4の活動に多少の支障をきたしても受ける価値のあるビジネスチャンスだということだ。
 自分達は、今後の日本の男性アイドルの未来を切り開くための先駆けだ。大袈裟な表現だが、社長はいつもそう評しているし、陽介も彼の夢に共感している。何より、デビューしてから、社長の語る言葉の重みをひしひしと感じるようになった。凝り固まった地図に風穴はそう簡単に開かない。身体的な嫌がらせこそないが、あからさまな差別や冷遇は幾度となく経験している。悔しさと怒りで眠れない日もあった。
 外見の華やかさとは裏腹に、暗黙のルールや圧力が当たり前の汚い世界。生き抜くためには何よりも人気が必要だ。立ち位置を確立するまでは、仕事は選べないし、選ばない。リスクの高いものや、イメージダウンに繋がるものは、事務所側が篩に掛けてくれている。己の誇りのためにも、まだ見ぬ後進のためにも、自分達は与えられた仕事に全力で取り組むまなければならない。だから陽介は意を唱えられない。
 孝介はすまなさそうに言う。
「勿論、できる限りP4を優先する。でも、オレのせいで皆に色々迷惑をかけるだろうし、陽介にフォローしてもらわなきゃいけないと思う。…ごめん、だけど、どうしてもこの仕事をものにしたいんだ」
のろのろと顔を上げると、銀灰の瞳には決意の炎が灯っていた。コンサートの時と同じだ。
(そう言われちまったら、嫌なんて、言えないじゃねーかよ)
孝介が好きだ。だから彼の望みなら何でも叶えてやりたいし、彼の夢を応援したい。だが、一番近くにいる自分に、少しくらい話してくれてもよかったのではないか。要は拗ねているのだ。
 しかし、彼自身が望み、決断を下した以上、もう他人が何を言っても届かない。釈然としないものを感じつつ、陽介は渋々頷いた。納得はできていないが、恋人の力になりたいのも本当だ。
「…分かったよ。全力で応援する。だからお前も、精一杯がんばってこい」
孝介はほっとしたように表情を緩め、「ありがとう」と微笑んだ。そのうつくしい笑顔に、そこから喚起される狂おしいほどの情愛に、陽介の胸はじくりと痛んだ。
 (俺は、こいつの手を、放せるんだろうか)
P4のメンバーは、各々が個性と特技を生かして個人でも活躍している。陽介は歌手としてソロでも活動を始めたし、完二は自分達の衣装デザインに関わっている。クマはその人懐こいキャラクターで様々な番組にゲストとして呼ばれている。そして、孝介はそう出番の多くない役どころとはいえ、いくつかのドラマに出演し、高い評価を得ていた。
 彼の母親は有名な女優である。既に引退している彼女の周りを騒がせたくないという孝介の意向により公表を控えているため、知っているのは限られた事務所関係者と陽介、完二、クマだけだ。彼が母を尊敬し、密かに演技の勉強を続けてきたのを陽介は知っていた。大学に入ったら、先輩のいる劇団のオーディションを受けるつもりだったのも。
 孝介は、本当はアイドルではなく、俳優になりたかったのだ。高校時代も、彼は演劇部だった。自分達がスカウトされるきっかけとなった文化祭のライブだって、人出不足の劇に陽介が端役として出る代わりに、ピアノを習っていた孝介をキーボードとして無理矢理引っ張り出したのだから。
 孝介は陽介には甘いが、だからと言って自分の意思を殺したりはしない。彼がアイドルとして芸能界へ入るのを決めた以上、P4としての活動が嫌な訳ではないだろう。
 だが、活躍の幅が広がり、増えた選択肢の中に、本当にやりたかったことがあったら。才能に溢れ、誰からも愛される彼が、本当に輝ける道が拓けたのだとしたら。
(俺の存在は、ただの枷だ)
どこまでも広がる青空へ羽ばたこうとする鳥を、地面に縛り付ける重い鎖。やさしい恋人は、きっと陽介を置いてはいけない。社長への恩もある。彼は理想と現実、情と欲の間で葛藤し、己をすり減らしてゆくだろう。
 俳優とアイドルの二足の草鞋を履けないこともないだろうが、人気が出てきたこともあり、アイドル業はかなり多忙である。加えて、大学も続けるつもりならば、時間的に両立は難しい。中途半端を嫌い、自立心の強い孝介の性格を考えれば、俳優を目指すならばP4を抜け、演技に集中するに決まっている。だが、その決断を下すのまでに、彼はどれだけ苦悩するだろうか。
 愛しているから、傷付くのを見たくない。幸せになって欲しい。だから、時が来たら、自分は潔く手を離さなければならない。彼を解き放ってやらなければならない。ずっとその日が来るのを恐れていたが、もしかしたら今が契機なのかもしれない。
 陽介にとって、P4が占めるウェイトは大きい。ソロ活動もやりがいがあるが、できればずっと仲間と共に歩んでいきたいと願っている。だが、孝介が抜ければP4は解散してしまうだろう。グループ内の人気は孝介がダントツで、リーダーの彼あってこそのP4だからだ。
 そして、グループという繋がりが切れれば、いくら親友で、同じ事務所であっても、滅多に会えなくなる。恋人でもいられなくなるかもしれない。それでも、陽介は、彼を引き止めたくなかった。他の誰が反対しても、陽介だけは背中を押してやると、初めて抱かれた日に誓ったのだ。
(大丈夫、放せる。…多分。覚悟してたんだから)
痛みを堪えて陽介は微笑む。口に含んだカフェオレは甘いはずなのに、どうしてか酷く苦く感じた。

【maybe.probably,absolutely】



2
孝介がほぼ不在でも進む毎日。迫る新曲リリースとライブ。新曲のためのジャケット撮影で久々に合う。同居しててもほぼ合わない。孝介、ちょっとやつれている、というか、精悍になった?そして撮影が終わるとすぐ去ってしまった。
不満、よりも、寂しさが募る陽介。クマに実家かえってきたら?って言われるけど、拒む。もしかしたらアイツが帰ってくるかもしれないからって。
久々に大学に行く。共通の友人である一条に愚痴。一条は関係を知っている。励まされる。自分は自分にできることをしよう。手を放した後、一人でも生きていけるように。
(きっと、その日は近い。覚悟しとかないと)
陽介、寂しさを紛らわすように仕事に打ち込む。ソロシングルも好調。今まで控えめだった雑誌の取材もばんばん受ける。それでも、陽介はなるべくグループを優先してるのに、やっぱり孝介はあんまりこない。

ライブまであとちょっとになったある日、取材の後、事務所の先輩にごはんにつれてってもらう。かわいがってもらっている、二十台前半のヒト。そこそこ遅くなったので、タクシーにのり、陽介の家→先輩のマンションとなり。
「いいとこ住んでんじゃん」「孝介の親がそういう仕事してるみたいで。紹介してもらったんです。俺一人だったらこんなとこ住めませんよ」
ひさびさに湧き上がる、うらやむキモチ。孝介はなんでも持ってる。なんでもできて、誰にでも愛される。でも自分は違う。同じにはなれないし、なる必要はないし、自分は自分でいいし、それでいいって彼も言ってくれたけど。陽介にだってプライドはあるのだ。
先輩、半ば無理やり、ちょっと話すっか?とタクシー返してあがる。ヒトを呼ぶときは互いに許可、というルールがあったが、どうせ彼はいないし、この先輩には孝介ともどもかわいがってもらってるからいいかって。通す。
先輩、言う。「ちょっと心配してたんだ。花村は、どうしても月森と自分を比べるだろ。違ったら悪いけど、俺もおんなじような感じだったから」陽介、はっとする。このヒトもグループ出身。幾度か組み替えがあり、一番中のよかったヒトは俳優へ転向したはずだ。
陽介、不安をこぼす。孝介に依存してる自分がいやだって。弱いって。でも、あいつが大好きだから、枷になりたくないって。
先輩、やさしく陽介の頭を撫でてーー抱きしめる。そこまではよかった。普段からスキンシップの多いヒトだから、ハグだと思った。だがキスされ陽介、はっとする。強い力、抗えない。
(怖い)
先輩、顔を離して困った顔。ごめん、ここまでするつもりじゃなかったんだ。で、告白。でも、男同士、芸能人同士のむずかしさは理解してるから、せかしはしない。そのうち返事くれ、だめでも今まで通りにって。こっちも普通にするからって。
じゃあな、と去ってゆく。陽介、しばらく呆然としていた。

ぐるぐるした頭のまま、次の日は朝からテレビの収録。新曲を歌う。
だが陽介、思考が散漫でミスを連発。反対にほとんど練習にきていなかったはずの孝介はほぼ完璧。怒られてしまう。
休憩が入り、楽屋に引っ込む。気を使ってクマと感じは外へ。センセイと二人きり、きまずい。問い詰められる。まさか先輩にキスされました、とも言えずに悶々としていると、追い詰められ、無理やりにキス。
「昨日、誰を家に入れたんだ」「?!」孝介に見られてた。
浮気を疑われ、言葉でおとしめられ、鏡の前で犯される。でも何も言わない孝介。言え、といわれて反論。「お前だって、何も、言ってくれないじゃねーかよ…!」
むなしいつながりの後、気まずい二人。孝介、全部ライブの日に離すから。都合がいいけど、待っててって。
陽介、別れ話だと解釈。恋人としても、友人としても、グループとしても。

ぐるぐるしながら考える。自分は枷だった。それでも孝介が好きだから、手を離そう。彼を解放しよう。
そうなったら、きっと今度のライブが最後。自分のソロ曲もあるし、精一杯のステージを彼へのたむけにしよう。
そのためにはまず、目の前の収録を。陽介、プロの顔になり、立ち上がった。


3
そして迎えたライブ当日。進行表見ると、事務所側からねじ込まれたプレスの時間が入ってた。知らない。何言うの?ってマネに聞いても、自分たち含めてサプライズだって教えてくれない。
気になりつつ、孝介との最後のステージだからってがんばる。しかし破損した機材につまづき、舞台裏を移動中に足を捻ってしまう陽介。すごい腫れてる足。これ以上続けるのは無理だ、休め、という仲間に、陽介痛み止めを打ち意地でもと出る。
サプライズの時間。孝介、呼ばれる。?となる陽介の耳元で、孝介、ささやく。
「ごめんね、お前にも言えなくて。これが答え。俺に一番近いここで、見てて」って。
会場の電気が落とされ、でかいスクリーンに映像。映画の一幕。外人に混じって流暢な英語で話しているのは――孝介!
騒然となる会場。わずか数分の映画は終わり、スポットライトの下に孝介。
「○○監督の映画に、出演させていただくことができました」
監督は徹底した秘密主義で、公式リリースまで仲間にも話せなかったこと。現地時間の昨日深夜にようやく解禁になったこと。
「仲間には、特に相棒の陽介には心配をかけてしまいました。俳優にも興味はあります。が、欲張りですが、両方がんばりたいんです。いずれどちらかを選ばなくてはいけないかもしれない、でも、俺にとってはどっちも大事だから。どうかこれからも、応援してください」
わぁ、と拍手。袖から飛び出して行って孝介に飛びつくクマと完二。あいされている。
でも、陽介は足が痛いのもあって出て行けない。頭ん中ぐるぐる。
(孝介は、自分を選んでくれた。なのに自分は)
親友がどれだけがんばってきたか分かっているから、彼が認められるのはすごくうれしい。でも、おいていかれてかなしいし、信じてもらえなかったのも、信じられなかったのも悲しい。
サプライズ発表の時間が終わり、次は新曲。急いで衣装着替え、後ろの花道から出る準備。痛い、歩けない。でも出なきゃ。
孝介、陽介の耳元にだけ耳打ち。
「ごめんね。ホントは、ゆれてた。自分でも自信がなかったんだ、両方やっていけるのか。お前にさびしい思いをさせることになるし、離れる時間も多くなる。でも、どっちも捨てられない。どこにいても、何してても、お前のことがすきで、特別なのはお前だけ。だから怖がって手を離すより、できるところまで掴んでやろうと思ったんだ」
「・・・大丈夫、俺は俺なりにお前を負うから。待っててくれなくていい、手を離さないでくれたら、それだけでいい」
この手を離すことなんてで、絶対にできない。彼がすきだから。
掠めるようなキス。流れ込んでくるキモチ。目頭が熱い。
カウント取られる。「いけるか?」「ああ!」しかしふわり、と持ち上がるからだ。お姫様だっこ。
「!!!??」
孝介、陽介を抱き上げ微笑んで、そのまま花道を駆け上がる。さあ行こう、自分
たちを待っている、大歓声と熱気に包まれたステージへと!


4、
序章と同じシチュエーション。ただし孝介と陽介が逆で、ソファにいるのは孝介。
見ているのは新曲のPV。花畑の中、白いタキシードを着た孝介と、白いドレスを着た少女が向かい合い、手をつなぐ。コントラストの強い色、どこか物寂しい、くるおしく互いを求める曲。
「おわ!?またそれ見てんのかよ?!」「だって陽介がかわいいから」
彼女を見る孝介の目は甘い毒のよう。でも腹は立たない。だってあれは、女装した陽介だから。
陽介、いたたまれなくなって消す。孝介抗議。
「お前、やっぱ女の方が」「ちがうよ。全ての陽介がほしいんだ」
甘くちゅっちゅ。めいびーぷろばぶりーあぶそるーとりー、のイミ。幸せでおわり!
自分たちは迷い、躓き、立ち止まるけど。でもそのたびに多分、きっと、絶対、互いを選ぶ。

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