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密室の寸劇 ※R18

★花主
※R18
短いです。居酒屋の個室でむらむらした主が陽介にイタズラする話。

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 たまには外で飲みたい時もある。
 がやがやと騒がしい居酒屋の隅にいくつか設えられた個室で、陽介は結人と酒を酌み交わしていた。アルバイトはしているが基本的には親からの仕送りに頼る身であり、普段は大抵家で飲むが、今日は買い物をした後、一杯飲みたい気分になり、よくあるチェーン店の居酒屋に足を運んだのが一時間ほど前のこと。まだまだ食べ盛りの二人は先に牛丼屋である程度腹を満たしてから行くという周到ぶりである。こうしておけば然程注文しなくて済むからだ。
 運よく個室が開いており(というより、そこしか開いていなかったという方が正しい)、襖で区切られた薄暗い座敷に上がった二人は、ほろ酔い気分で他愛もない話に興じていた。ルームシェアという名の同棲をしているため、帰る家は同じであり、毎日のように顔を突き合わせているが、話題が尽きることはない。黙っていたとしても気まずくもない。最近はレポートの追い込みやアルバイトで擦れ違うことが多かったため、二人は隙間を埋めるように色々なことを話した。
「陽介。次、何飲む?」
ハイボールのジョッキが空になったのを見て、結人がすぐにメニューを差し出してくる。よく気が付く女房のような振る舞いに自然と頬が緩んだ。時たま傍若無人にもなるが、自慢の恋人は基本的にはやさしく、陽介のことをとても大事にしてくれる。しあわせだと思った。
 礼を言ってメニューを受け取り、ぱらぱらとドリンクのページをめくる。ちらりと向かい合う結人の手元を見れば、彼の飲んでいた梅酒のロックもそろそろ空になりそうだった。二人ともそれなりに酒には強い。どちらかといえば陽介の方が強く、結人は睡眠時間や体調によって酔いが回るのに大分差があるが、今日の様子ではまだまだ余裕そうだ。酔い潰れるほど飲むつもりはないがもう少し飲みたい気分だったので、陽介はやかんの写真を指差して結人に見せる。最近はどこの居酒屋でも大抵見るようになったマッコリだ。二人で数杯ずつ飲めて、他のカクテル一杯より少し高い程度の値段は魅力だった。
「な。次コレにしない?コップ2つもらって」
「いいよ。じゃ、インターフォン押すぞ」
 ぴんぽーん、と気の抜ける呼び鈴の音が鳴る。程無くして現れた店員に注文を済ませ、陽介は後ろ手に腕を突いた。隣りは宴会をしているのか、襖一枚隔てた向こうからはかなり賑やかな声が聞こえてくる。けれども然程不快ではない。心に余裕があるからだろう。結人がいれば、自分はいつだって満たされている。
 綺麗な箸使いでイカの一夜干しを摘まんでいる結人を見る。間接照明に照らされた彼は、男の自分から見てもくやしいほど綺麗で、格好よくて、でもかわいい。ほんのり色づいた頬が目の毒だ。頭も性格も、声だっていいのに、結人はどうしてか自分がいいのだと言う。執着を見せてくれる。最初に垣根を越えたのは確かに彼だったが、今では自分だって同じ想いを、もしかしたら彼以上に返しているのに、すぐに自信がないと言うのが陽介には不思議でたまらない。自分の方が、いつ彼が陽介よりも素敵な誰かに浚われるのではないかとヒヤヒヤしているというのに。
(そんなところが、かわいいんだよな)
「…何、にやにやしてんだよ」
「別にー」
 体を起こし、不審な目を向けてくる彼の左手をそっと包み込む。長い指を先端から掌へ指の腹で撫で、一本一本、感触を確かめるように触れれば、結人は不機嫌そうに俯いた。しかしよく見れば耳元がほんのり赤い。恥ずかしがっているだけのようだ。
(ホント、かわいい)
普段は大胆なくせに、思いもよらない所で恥ずかしがる恋人がかわいくてかわいくて仕方がない。振り解かれないのをいいことに愛撫を続けていると、コンコン、と扉が叩かれ、陽介は慌てて手を放した。
「お待たせいたしました、マッコリです。グラスはお二つですね」
アルバイトであろう、自分達とそう年の変わらぬ女性に反射的に笑顔を向けて受け取り、ついでに空になったグラスと皿を下げてもらう。片付いた卓上に冷やされた湯呑を並べ、白濁を注いでいると、手元に刺すような視線を感じた。自分以外にこの部屋にはもう一人しかいない。
「…あの、そんなにガン見されると、やりにくいんですけど」
先程までに甘い空気とは一変、ものすごい形相でこちらを睨んでいる恋人に、陽介は恐る恐る声を掛けた。何が彼の逆鱗に触れたのか分からない。注ぎ終えた酒を彼の目の前に置くと、結人はそれを引っ掴み、一息に飲み干す。
「おかわり」
「…へいへい」
濁った酒で再度器を満たすと、またも結人は一気にそれを煽った。ぷは、と息を吐いた彼の頬は上気し、強い光をたたえていた眼がとろんとしてきている。酔っている時の表情だ。三度差し出された湯呑をそっと彼の手から引き剥がし、陽介はやさしく言った。
「今日はここまでな。まだ飲みたいんなら家帰ってからにしようぜ。あ、水もらおうな」
 先程呼び付けたばかりなのにまた呼び立てることに申し訳なさを感じつつも、呼び鈴に手を伸ばす。しかし結人の腕がそれを遮った。
「結人?」
「……陽介、の、浮気者」
「へ?」
結人は立ち上がると、テーブルを迂回して陽介ににじり寄る。得物を狙う肉食獣のような彼に迫られ、陽介は自然と後ずさり、壁際に追い詰められた。とん、と背中が板に辺り、逃避行は呆気なく終了する。
「ちょ、結人さん?」
「いっつもそうやってヘラヘラしてさ。確かにまぁ、かわいい子だったけど。そうやって誰にも彼にもいい顔して、気を持たせるのってすごいよくないと思う。反省しろ」
 彼の眼は完璧に座っていた。膝立ちになった彼は陽介の太股に手を置き、やおらベルトに手を掛ける。意図を察し、慌てて制止しようとしたが、あまりに結人が本気の目をしているので陽介は動きを止めた。彼は嫉妬しているのだ。嬉しくもあるがあまり思い詰めさせたくもないので、自分に悪戯をする程度で彼の気が晴れるのならばと力を抜く。流石にここでは大したことはされないだろうという打算もあった。大人しくなった陽介に、結人はにやりと口の端を吊り上げる。
「反省、したか?」
「しました。もう十分に」
「そっか。じゃあお仕置きな」
 噛み合わない会話の後、結人は迷いのない手付きで陽介の前を寛げ、性器を掴んだ。直接的な刺激に、意志とは関係なく体が跳ねる。陽介は慌てた。
「おい、結人!」
陽介が座っているのは出入り口の引き戸からは遠い側で、開けられない限りは何をしているかばれることはない。けれども、襖の向こうには大勢の他人がいるし、不審な音や声がすればすぐに店員が様子を見に来るだろう。動じる陽介をよそに、結人は躊躇いなくまだ萎えている肉棒を扱き始めた。
「っ、あ…!」
もう触れていない所なんてないほどお互いの体を知り尽くしている関係だ、結人の動きは的確で、陽介の好きな場所ばかりを攻めてくる。袋を左手で揉みながら、竿を握った右手で千摺りをされ、あまりの気持ちよさに陽介は口を押さえて声を堪えなければならなかった。
「んっ、う、ッ」
「陽介、すごいかわいい。お前、結構飲んでたけどちゃんと勃つのな。ほら、もう出て来た」
 あっという間に勃ちあがり、先端から先走りを零し出した陽介のものを見て結人は無邪気に笑う。反論しようとしたその時、隣りの部屋からどっと笑い声が聞こえ、陽介は大げさなほど震えた。もし今、この襖が開けられてしまったら。股を開かされ、局部を剥き出しにし、同じ男に握られている自分の姿が曝されてしまったら。そう考えるだけで堪らなく恥ずかしくなり、陽介は必死に恋人を止めようとした。けれども愛撫によって力が抜けてしまい、自分とそう体格の変わらない彼を押し返すことができない。
「な、ゆい、と!ダメ、だって」
「陽介、すごいかわいい。オレ、やっぱりサドなのかな。お前が嫌がってるの見ると、すごく興奮する」
結人は妖艶な笑みを浮かべ、手の動きを早くした。もう冗談では済まさない、明らかに陽介を射精させようとしている。こんな誰に見られるかも分からない居酒屋の一室で。
「ふっ、あ!ッ、ん」
 陽介は両手で口元を覆い、声を堪えることしかできなかった。けれども、漏れる水音は消すことができない。くちゅくちゅという卑猥な音が、宴会の喧騒で掻き消され、誰の耳にも届かないことを祈るばかりだ。
 ぞくぞくとした快感が背中を走り抜け、目の前が白くなる。爪先で穴を軽く引っ掻かれ、陽介は小さな悲鳴と共にびゅくびゅくと白濁を吐き出した。
「ひあっ…!!」
結人の手が熱い飛沫を全て受け止める。はぁはぁと荒い息を零す陽介の目の前で、彼は見せつけるように掌から手首を伝う精子を舐め取ってみせた。
「――っ!」
「さっきの、マッコリみたいだな。白くて濁ってる。でも、陽介の方が、あっつい」
白濁をおいしそうに舐める赤い舌の淫猥なコントラストに、達したばかりだというのにまた下肢に熱が集まってゆく。気が付けば陽介は、結人を抱き寄せて無茶苦茶なキスをしていた。酒と性の味がする互いの舌を夢中で絡め合う。やわらかくて熱く滑った結人の咥内は、目眩がするほど気持ちよかった。
「ん、あ、ッ、よ、すけ」
縋ってくる体がいとおしい。先程までのお返しとばかりに満足するまで彼の唇を貪った後、陽介はゆっくりと顔を放した。今ので完全に酔いが回ってしまったのか、結人は腕の中でくったりとしている。まだ手に残っている自身の精液をおしぼりで拭ってやり、少し乱れてしまった銀糸の髪を手櫛で直した後、陽介は今度こそコールボタンを押した。潤んだ瞳を向けてくる恋人に、同じくらいの情欲を灯した目線で応える。
「帰ろうぜ」
 体にはすっかり火が点いてしまった。キスくらいでは満足できない。家のベッドで、きちんとゴムとローションを使って、彼と一緒に思う存分愛し合いたい。うつくしい顔を、肢体を、自分と彼の体液でぐちゃぐちゃのどろどろびしてやりたい。可愛い声で鳴かせたい。
「……ん」
言葉にせずとも伝わったのか、結人はそれはそれは嬉しそうに微笑んで頷いたのだった。



END

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