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起点Aから空への距離・3 ※R-18

※R-18、陽介女体化(後天)注意
意外と難産でした…。あれあれ、センセイが早くもいい思いを!(最後まではしてないですが)
あと捏造花村家を含みますのでご注意ください。だっていきなり住所不定無職で戸籍も住民票がないクマを連れてきてもあっさり受け入れて働かせちゃうようなオープンなおうちですから!

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――ほぅ。
慣れ親しんだ自室の、自分の匂いのする枕に顔を埋め、陽介は息を吐き出した。案じるものではない、安堵が漏れたものだ。
店長として稲羽への転勤が決まった際、父が家族のために選んだ一軒家。雇われ店長はどうせ二、三年で転勤するため賃貸物件だが、築浅のためか作りは至って都会的で、悪く言えば画一的すぎて特徴がない。それでも陽介にとっては一番落ち着ける、特別な場所だった。
いささか安っぽいフローリングの床。作りつけのクローゼット。部屋の隅に無造作に積まれたCDと本。母親が干しておいてくれた、お日さまの匂いのするベッド。またここに戻ってこられたことに心からの安寧を感じる。
(よかった――)




**********




日曜日の夕方、陽介は自称他称相棒と共に花村家の玄関に立っていた。日没までの時間はそのまま陽介の決心に要した時間だ。
「い、いいか、押すぞ」
「どうぞ。っていうか陽介の家なんだから普通に入ればいいんじゃないの?」
言葉に詰まりながら、陽介は他人行儀に自宅のインターホンを押す。変異から更に一晩経っても、その体は変わらず女性のままだ。体は一回り小さくなり、元より華奢だった体はやわらかな丸みを帯びながらも更に細くなった。声も高くなり、身に纏う服もいつもの陽介とは違う。けれども、孝介は陽介を見誤ることはなかった。体から記憶から隅々まで調べたというのもあるが、少し垂れ気味の大きな瞳、その奥にある絶対的な信頼と愛情の色は、花村陽介しか持ちえないものだからだ。自分の肩の辺りで頼りなげに揺れているハニーブラウンを見ると思わず抱き締めたい衝動に駆られるが、孝介は培った根気でもってそれを制す。
昨日のメールの感触では、陽介の母は自分の子供を「娘」と認識していた。体がすっかり女になってしまった陽介が帰宅することに何の不都合もない。彼女の心情をよそに、ガチャリ、と施錠の外れる音がし、ゆっくりと扉が開かれる。姿を現した母は二人の姿を認めると不思議そうな顔をした。
「?陽ちゃん、カギ忘れたの?」
「いや、まあ」
彼女は横に立つ孝介をちらりと見、何を想像したのかさっと口元を押さえ、狼狽したように呟く。
「………まさか、子供がで」
「――いやいやいや!違うから!!断じてできてないから!!!」
即座に、しかも力いっぱい否定する陽介に若干面白くないものを感じながら、孝介は余所行きの顔と口調で話しかけた。
「実はちょっと、陽介が悩んでいることがあるみたいで。一人じゃ話しにくいって言うんでオレも来たんですけど、少しお時間取れますか?」
母は安堵と驚きを同時に顔に浮かべると、頷いて二人を家に招き入れる。今のソファに並んで座りお茶が入るのを待つ間、孝介は緊張ですっかり強張り冷たくなった陽介の手をそっと握る。
「大丈夫。とりあえず、単刀直入に聞いてみろ。フォローするから」
「お、おう。頼む」
お気に入りのトレイに人数分の紅茶と焼き菓子を載せてきた母に、陽介はアドバイス通り単刀直入に訪ねた。

「か、母さん。あのさ、俺って…本当に女?」


母からすれば青天の霹靂だっただろう。あんなに驚いた母を見たのは生れて初めてかもしれない。だが彼女は馬鹿にすることも否定することもなく、必死さゆえに散漫になりがちな陽介の言葉と、それを嘘ではないが真実には足りない事実を混ぜた見事な言葉運びで繋げる孝介――彼は嘘が嫌いだ――の話を聞き、自らの中にあった矛盾する2つの記憶から1つを選んだ。彼女が産み、育んできたのは「息子」だという記憶だ。人の心の中も、記憶も、可視化はできない。もしかしたらあまりにも必死な自分に話を合わせてくれているだけなのかもしれない――恐れと懐疑に支配されかけた陽介だったが、母が「思い出した」と呟いた瞬間、パズルのピースがかちりと嵌まったような奇妙な感覚を覚えた。そして何故かそれが、母が偽りの記憶を退けた証拠なのだと諒解した。
「………陽ちゃん、本当に女の子になっちゃったのねぇ」
しみじみと呟く母から嫌悪は微塵も感じられず、ただただ驚いているだけのようである。気持ちが悪くないのか、と思わず訪ねた陽介に、母は少女のように軽やかに笑ってみせた。
「自分のお腹を痛めて産んだ子が気持ち悪い訳ないでしょう。それにお母さん、昔からよく不思議なことが周りで起きてたから、大抵のことは受け入れられるつもりよ。…そうね、クマさんもちょっと不思議ね。でも悪い感じはしないから、陽ちゃんがうちで面倒見たいって連れてきた時もOKしたの」
呆気に取られる二人を前に、彼女は全てを見透かすような眼で微笑んでいる。そして珍しく早く帰ってきた父親に掻い摘んで事情を話す。父親はあっさりと頷き、母親と同じような感想を漏らした。陽介の頭の中でまたかちり、とピースが合わさった音がした。横では滅多に表情を崩さない孝介が、珍しく呆けたような顔をしていた。




**********




(うちの両親、なんつーか、懐が広すぎる…)
だが今はそのことに深く感謝した。望むべくもなかった最良のケースで受け入れられたものの、未だ情緒不安定気味な心を持て余すように陽介はベッドの上で身じろぎを繰り返す。やがて鳴った控え目なノックの音に起き上がり、「どーぞ」と応えれば、髪に湿り気を残した孝介が入ってきた。花村家一同に押し切られる形で、彼は今晩泊まることになったのだ。
孝介がベッドの淵に腰を下ろす。スプリングが軋み、体を起こした陽介の体も揺れた。陽介のものだったスウェット越しでも分かる、まだ少年のあやうさを残した、けれどもしっかりと筋肉のついた綺麗な体に胸が高鳴る。項に張り付く濡れた髪がやけに扇動的だ。
(コイツ、男のくせにこんなに色っぽいなんて、犯罪じゃねーか)
「お前のご両親、すごいな」
ぽつり、と言われ、陽介は頷くしかなかった。クマのことまでお見通しとは思わなかったのだ。孝介は片足をベッドの上に載せ、枕を抱いて胡坐をかいている陽介と向かい合う。その瞳はやさしいのに、僅かに持ち上げられた口の端がどこか嫣然としているのだから始末が悪い。陽介は微かに高揚した頬を隠すようにして、深々と頭を下げた。
「孝介。着いてきてくれて本っ当にありがとうな。お前がいなけりゃ、俺は多分まだ家にも帰れないでうじうじしてただろうし、親に思い出してもらうこともできなかったと思う。スゲー感謝してる」
「どういたしまして、と言っておこうかな。でも昨日も言ったけど、お前だけの問題じゃないんだから、あんまり一人で背負い込むなよ」
「うん…サンキュ」
暖かい言葉が嬉しくてへらり、と笑うと、頬に温かいものが触れた。孝介の手だ。そのまま体を引き寄せられ、逞しい胸の中に抱き込まれる。一回り小さくなった体はすっぽりと彼の腕の中に納まってしまった。そのことに違和感と寂寥感を覚えたが、変わらない孝介の温度はひどく心地よく、安心した。
「おー、あったけー」
「陽介、色気なさすぎ。ちょっと体冷えてる。暖房入れる?」
「いや、いいよ。つーかさ、今更なんだけど、お前、俺のことキモチわるくねーの?」
正直、陽介自身も現状を受け止めているとは言い難い。些細なことにも戸惑うし、変異した体を目の当たりにする度に羞恥に苛まれる。自分ですらそうなのに、他人から見ればどれほど不気味なことだろう。だが孝介は微塵も躊躇せず頭を振った。
「いや。陽介は陽介だし。オレ、お前ならなんでもいいよ」
「…やべ、なんかちょっと変態っぽいのに今すごいきゅんときた。目から汁が出そう」
外見は可憐な女子高生なのに、中身はどこまでも陽介のままで、そのギャップに思わず孝介は苦笑した。笑みの空気を感じた陽介がふてくされたような声で名前を呼ぶ。少しだけ腕を緩め、ふっくらとした形のよい唇に孝介は口付けた。最初は啄むように、次第に深く。舌を絡め、お互いの吐息さえ貪る。陶酔感が胸を満たし、腰の辺りから熱い欲が湧き上がってくる。顎を伝う唾液がどちらのものか分からなくなるまで二人はキスを続けていた。
「あっ…!」
シャツの隙間からから侵入した孝介の手が、すべらかな素肌に触れる。脇腹をなぞられぴくりと体を震わせた陽介に、孝介はそれ以上進めることなく手を引いた。潤んだ瞳で問うように見つめられ、孝介は困ったように微笑む。
「したいのはやまやまなんだけど。やっぱり陽介がその体に慣れるまで、そういうことは控えておこうかと思って」
「……昨日の朝のアレは何なんですか、月森さん」
清浄な朝の光の中での情事を思い出し赤面する陽介に、孝介は謝るしかなかった。
「ごめん。昨日は暴走しました。返す言葉もありません。でもこれからは陽介がいいっていうまで本当にしないよ」
きゅ、と抱きしめられた拍子に、陽介のやわらかな内股に固いものがあたった。孝介は「こんなにしながら言っても格好つかないけど」とぼやくが、本当にそれ以上行為を進めようとはしない。
孝介と抱き合うこと自体に躊躇はない。男性同士だった時よりも自然の摂理に適っているし、心が繋がっている今、体も繋がりたいと思うのは当然のことだ。昨日のように勢いで流されれば、孝介を受け入れてしまうことを陽介は知っていた。だが自分の心は体とまだ乖離していて、今の状態で体を重ねることには恐怖に近い戸惑いがあった。孝介は陽介の恐れを看破したのだろう。大事にされていると、そう感じて陽介の胸が熱くなる。シャツに縋りつく指に力を込めると、孝介のあやすようなやさしい声が降ってきた。
「オレ、変なのかもしれないけど、陽介が男でも女でも好きなことに変わりないし、抱きたい。そのうち元に戻っても、ずっとそのままでも、今まで通り相棒として、恋人として傍にいたい。っていうか、いてください。じゃないとオレ、おかしくなる」
それは陽介が一番欲していた言葉だった。空気を震わせる余韻すら逃さないよう息を潜める陽介に、孝介はおどけて付け加える。
「でも、オレも健全な高校生だから、あんまり長く待たされると我慢できないかも」
「………浮気、すんなよ?」
口から洩れたのは泣き出す寸前のような弱々しい声で、陽介は自分でも驚愕した。体に引きずられて心まで女々しくなっているような気がする。慌てて弁明を始めようとした陽介の口を己の唇でもって塞ぐと、孝介は心底嬉しそうな笑顔を見せた。
「絶対しない。菜々子に誓ってもいい」
彼の最愛の妹の名前まで出されたら信じるしかない。陽介の肩から力が抜けたのを見て、孝介はそっと身を離した。
「そろそろ寝ようか。陽介、なんだかんだであんまり休めてないだろ」
「ん、ああ。っていうかお前、その、それ。そのまんまで寝られんの?」
孝介のものは未だ勢いを保ったままである。彼は少し恥ずかしそうに顔をそ向けると、「トイレ借りる」と言って立ち上がった。陽介は咄嗟に彼のスウェットを掴んで引き留める。
「陽介?」
「お、俺、その…俺がしても、いい?」
目的語を欠いだ日本語でも、コンテクストの高い孝介は陽介の言わんことを察したようで軽く眼を見開いた。しかしすぐに頭を振り、握られた手をやんわりと引き剥がす。
「ダメ。お前としないって言ったのは、挿入れられないなら口でしてって意味じゃない」
「ちげーよ!おっ、俺が、したいの!お前をきもちよくしてやりてーの!!」
思わず大声で言いきった陽介に、孝介は一瞬息を詰めると、諦めたように溜息を吐いた。
「……じゃあ、オネガイシマス。無理しないでいいから」


部屋の鍵をかけ、孝介をベッドに座らせる。男の時でさえあまり行ったことのない行為に陽介は緊張を隠せなかった。だが孝介を気持ちよくしてやりたいという思いだけで、震える手を叱咤してスウェットをずり下げる。現れたそれは既に張りつめていて、少しの刺激で弾けてしまいそうだ。陽介はこくり、と唾を飲むと、何度も自分を鳴かせた凶暴な尖りをそっと両手で握り込む。どくどくと脈打っていて熱い。
羞恥に顔を赤くしながら、陽介はその形のよい唇で孝介のものをぱくりと咥えた。滑りと熱さに包みこまれ、孝介が僅かに上ずった声を漏らす。その声をもっと聞きたくて、いつも彼がしてくれたように舌と手を使って懸命に愛撫する。口が少し小さくなったのか、孝介のものが口内に納まりきらない。己の唾液とそうでないものでぐちょぐちょになったそれから一旦顔を放し、根本から舐め上げれば、快楽に流されるのを押し留めるように彼の長い指が髪に差し込まれた。
「陽、介っ…」
名を呼ぶ声に余裕はない。ちらり、と視線を上げれば、壮絶な色香を放つ孝介と目が合った。きゅ、と下腹あたりが熱く、痛くなる。
(なんかヘンだ、俺。コーフンしてるからか?)
「くっ…!」
握り込んだ楔がぴくぴくと震えている。限界が近いのだろう。陽介は濡れそぼる孝介のものの先端を口に含むと、緩急を付けて抜き差しをした。頭を引き剥がそうとする腕を無視して吸えば、くぐもった声と共に熱い液体が口内に勢いよく注ぎ込まれる。流石に飲むことはできなくて顔を歪めていると、荒い息をした孝介が慌ててティッシュを差し出してきた。
「っ、ごめん」
「いーよ。…気持ち、よかった?」
おずおずと問えば「最高」と返されて、陽介は嬉しくなった。後始末を済ませた後、客用布団をベッドの脇に敷き、二人はようやく床に就く。枕に頭を着けた途端、陽介は猛烈な睡魔に襲われたが、ベッドと布団との間の僅かな距離が何故かむしょうに寂しくなり、眠気に抗いながら呟いた。
「なぁ、一緒に寝てもいい?俺、縮んだし、そんなに狭くないと思うんだけど」
「…ダメ。疲れが取れないだろ。ここにいるから安心して寝ろ」
ぽんぽん、と布団を軽く叩かれ、不満は残るものの陽介は大人しく眠りに就いた。

すぅすぅという規則正しい寝息を聞きながら、孝介は深い溜息を吐く。
(オレ、自制心もつか…?)




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