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幸せな食卓

過去のweb拍手お礼小説サルベージです。大学生イチャラブ。

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 鍋は味噌味が一番好き。シチューはビーフよりもクリーム。カレーの具は小さい方がいい、食べやすいから。ラーメンは豚骨派。でもスパゲッティはあっさり系。冬でも冷たいうどんが食べたい。目玉焼きはどんな時もケチャップ。朝食はパンだと嬉しい。アイスはバニラと決まっている。ケーキといえばふわふわのいちごショート。あんこはこしあんでないと食べられない。

 鍋物は何でも好きだけれど、あえて一番を決めるなら醤油味。シチューはクリームよりも断然ビーフ。具が大きくてこそカレーだと思う。ラーメンは醤油が王道だと信じてやまない。スパゲッティはこってり系。年中うどんは温かい方がいい。目玉焼きはご飯のときは醤油、パンの時は塩。日本人の朝食は白米と決まっている。アイスはチョコとブランデーをたっぷり練りこんだショコラが好み。ケーキはタルトかパイ、要は咬みごたえのあるものが好き。つぶあんが大好き。

 「……気が合わないな、俺達」
「全くだな」
 今日は行きつけのスーパーが肉の特売で、いい牛肉と鶏肉が驚くほど安く買えた。夕食はビーフシチューを主張する考介と、クリームシチューを主張する陽介で意見が別れ、あちこちに話が飛びながらかれこれ15分ほど論議が続いている。ダイニングの机に向かい合って座った二人の間には、買って来た肉が山となって詰まれていた。
「つか、肉しまおうぜ。悪くなる」
「そうだな。何やってるんだろ、オレ達」
立ち上がった陽介が先ず牛肉のパックを掴んだのを見て、考介は咄嗟に彼の手を掴んで止める。
「陽介。今、どっちに入れようとした?」
「…っ!」
彼の片手は明らかに、冷蔵室ではなく冷凍室の取っ手にかかっていた。凍らせてしまえばこっちのものだと思ったのだろう。陽介はばつが悪そうに視線を逸らすと、手を振り解いて冷凍室の中にパックを押し込めよう――としたが、入らなかった。見れば中身はいっぱいだった。考介はさもおかしそうに笑う。
「残念だったな。お前がアイスばっかり買い込むから満杯だ」
「お前だってこの間、冷凍食品4割引の日にめっちゃ買ってたじゃん!」
「オレはちゃんと消費してるぞ。陽介は買ってあるのを忘れてまた次を買ってくるから全然減らない。いい加減片付けてくれないか」
「うっ…」
 家事は分担しているものの、食事については陽介は手伝うのみで、基本的には考介の役目になっている。従って、台所や冷蔵庫は考介の管轄であるという認識があり、陽介は強く出られない。考介はにこにこと笑いながら、陽介の手から牛肉のパックを取り上げ、「今日はビーフシチューだな」と高らかに宣言した。
 「……この間もビーフだったじゃん」
「鍋は味噌だったよ」
「カレーの具、おっきかったし」
「今度は小さくするから」
「俺の鶏肉、どうするつもりだよ」
「明日もシチューにしてもいいけど、流石に連続は飽きるだろ?竜田揚げにしようかと思うんだけど」
「…じゃ、いいよ」
唇を尖らせながらもしぶしぶ承諾した陽介の額に、考介はあやすようにキスをする。
 「…俺、ビーフシチュー、別に嫌いじゃないよ」
「知ってる」
「お前が作ってくれるもんなら何でも好きだし。あ、豆腐だけはカンベンな」
「オレもお前が美味しいって食べてくれるから、料理が好きなんだよ。ああでも、豆腐はいつか克服させるから」
「…シチューならパンがいい」
「はいはい。そう言うと思ってバケット買ってきた」
「俺達、結構気が合うな」
「そうだな」
 目を見合わせ、二人はくすりと笑う。とてもやさしい目が自分に向けられていることがくすぐったくなり、陽介は腕を孝介の首に絡めて抱き付いた。
「お前と一緒に食うなら、なんだって美味いよ」
 離れていた一年を思えば、一緒に食卓を囲めることがどんなに幸せなことなのか分かる。結局、孝介が作ってくれるものならば、陽介は何でも構わないのだ。
「ありがとう、陽介」
そう言って微笑んだ孝介は、見惚れるほど格好良かった。

 卵の黄身は半熟。おでんにからしは付けない。ご飯は柔らかめ。冷やし中華はごまだれよりも醤油だれ。マーガリンじゃなくてバター。厚めに切ったパンが好き。何より――二人で食べることが好き。

 「まだ夕食の準備には早いな。ゆっくりするか」
「とか言っておきながら、この手は何なんですかセンセイ」
明らかな他意を持って下肢を撫でまわす孝介の手を、陽介はぴしゃりと叩いてやる。悪びれた様子もなく彼は答えた。
「陽介と、ゆっくりしようかと思って。ベッドの中で」
「…このスケベオヤジ!変態!」
 きゃあきゃあと叫びながら、抱えるようにして寝室に移動し、ベッドの中に放り込まれる。いつになくしつこく嬲られ、喘がされ、真っ白になった頭の片隅で、陽介は次に自分が目覚めた時にはシチューの匂いがしていることを確信した。
(多分、クリームシチューだな)
立てなくなるほど激しく犯されても、シチューひとつで許してしまうお手軽な自分に陽介は苦笑する。その笑みを余裕と取ったのか、更に意地悪く攻め立ててくる孝介の欲を受け止めて、陽介は幸せそうに微笑んだ。




END

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